から紅の恋歌 「秋の空、君と」
から紅の恋歌その後のifのお話です
「秋の空、君と」
ギリギリの生命のやり取りを終えたばかりだ
と言うのに、元気にしていた和葉を見てオレ
は心底安堵していた
救出されるのを待つ間、びしょ濡れの和葉は、
私に言わなアカン事って何？と盛んに聞いて
来たんや
こないな落ち着かん場所で、大事な事言える
か、ボケ💢
びゅう、と風が吹いて、びしょ濡れの身体か
ら容赦無く体温を奪って行く
オレもびしょ濡れやし、と悩んだが、仕方無
いと、自分を追いかけ回す和葉の手を掴み、
抱き寄せると水中へ飛び込んだ
何すんの💢と怒る和葉と一緒に水に浮かぶ
「まるで一緒に温泉♨️入ってるみたいやな、
和葉ちゃん？」
「あほ！バカ！平次のスケベ！」
ぽかすか殴る和葉を、容易く抱き寄せたまま
2人で秋の景色の中、水中で救出を待つ事に
「こんなにキレイな景色やのになぁ」
どうせやったら、普通の旅行とかで来たかっ
たなぁ
「ホンマやね」
抱える和葉の身体から、力が抜け始めたので、
岩に背を預け、和葉を抱えた
「お疲れさん、和葉」
すうっ、と寝息を立て始めた和葉に苦笑しな
がらも、しっかりと抱えなおした
これで、監視カメラでも無ければキスの一つ
でもするんやけどなぁ〜
絶好のチャンス何だけどなぁ、と、頭上を激
しく旋回するヘリ達を一瞥した
救出されるまでの間くらい、くっつかせろや、
と思いながら
オカンから、和葉が一睡もせんと特訓に励ん
でいた事は聞いてた
和葉が少しでも眠れるように、と、小さな頭
をしっかり肩口に収め、顔を寄せ耳を塞いで
やった
それにしても、と思う
和葉が大変な事態になっていると、コナンか
ら聞いて、捜査の間に顔を出した時
オレを和葉は、すぐに戻れと追い返したのだ
ホンマは、ギリギリ一杯どころか限界を超え
たところで闘う和葉を、励まして後押しして
やりたかったのに
「ホンマ、相変わらず意地っ張りやねんな」
あどけない顔で、完全に眠る和葉をしっかり
抱えて、その耳にそっと囁いた
少しは甘えさせてくれてもええやんか、あほ
甘やかしてやりたい、と思うたから、オカン
に頼んだり、自分で顔を出したりもした
でも、ホンマは逆やってんな
頑張る和葉を見て、オレが励まされた
夢中で勝負に挑む和葉を見て、さっさと事件
解決して、和葉の勝負姿を見守ってやりたい
と思ったんや
そして、辛いのも淋しいのも我慢して、オレ
の背中を押すのを見て、甘えてんのは、ホン
マはオレやと思うたんや
よいしょ、と抱え直して、救助のため近づい
て来るものから庇うように、深く抱え込んだ
救出されて、病院に搬送される間、毛布に包
まる和葉をずっと抱えてた
診察室に運び込んで、漸くその身体を離した
時、オレはやっと安堵した
これで、和葉は大丈夫や、と
オレも和葉も助かったけど
あの事件で、オレの愛車はとうとうダメにな
ってもうたんや
買い直すのもキツイなぁ、思うてたオレに、
オカンが言うた
「今回は、和葉ちゃんに感謝しなさいね」
オカンが、頑張った和葉に何か褒美をやると
言うたら、
「せやったら、ダメになってしもうた平次の
バイク、少し援助したって下さい」
と言うたらしいねん、和葉
オマケに、おっちゃんが、和葉を助けてもろ
うたし、と言うて、結局、親父とオカン、お
っちゃんで折半して、オレのバイクを買い直
してくれる事になった
後日、和葉がダメになってもうたヘルメット
を買うてくれたから、オレもお返しに、新し
いメット、和葉に買うてやったんや
新しいバイクが納車されて、真っ先にその背
に和葉を乗せてバイクを駆った
秋が深まり、冬が訪れる少し手前の季節はキ
レイやった
一緒にバイク乗って
一緒に美味いもん食って
一緒に景色堪能して
くだらん事話し合いながら、喋り倒して笑い
倒して、ふざけあいながら歩いた
写真もぎょうさん一緒に撮ったし、あちこち
行って、満喫して帰宅したオレを、新しい事
件の報せが出迎えた
「行ってらっしゃい！気を付けてや！」
「おう、行って来る」
大きく手を振る和葉に見送られ、オレは新し
い相棒を駆って次の事件へと向かった
バックミラーに映る和葉は、元気に飛び跳ね
て大きく手を振っていた
その笑顔に、ふっと自分の頬が緩むのを感じ
て、おかしくなる
何や、オレら、新婚みたいやん、と
さしずめ、仕事に向かう夫の気分ってとこか
そう思うて、改めて決意する
今度こそ、和葉に伝えよう、そう誓いながら
オレは愛車で夜の街を駆け抜けた
ただいま、を君に告げる時
自分の胸の内も、告げられたら
そんな事を考えながら、新しい愛車の速度を
ぐん、と上げた
Fin.
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