Go for it ！完成版_3
第2章 新天地
あの事件に旅立つ前
和葉へのクリスマスプレゼントとして、
オレは新婚旅行代わりのプランを和葉への
提案書として残していた
姉ちゃんとオカンの証言やと、和葉はそれ
を何度も見返しては、あれこれ楽しそうに
書き込んでいたらしい
実際、オレが帰阪して手にした提案書のファ
イルには、和葉の文字でたくさんの書き込み
用の付箋があちこちに貼ってあった
和葉が入院中、姉ちゃんが届けてくれたその
ファイルを、和葉と2人、何度も開いてはあ
れこれと話し合った
ピーターラビットの街にも行ったし、あちこ
ち周遊して堪能した英国旅行は、あっと言う
間に終えた
オレはタバコを吸うてみたし、酒も、飲んで
みたけれど
和葉に匂いがつくのが嫌で、和葉に触れられ
んのが嫌で、タバコは1本吸うて、全部捨て
てしもうた
和葉にも、自分は将来オレとの子が欲しいか
ら、自分の前ではやめてくれ、言われてな
自分が居らん場所やったら、ええよ、と言わ
れたんやけど、オレも、自分の健康には気を
つけて過ごさなアカン責任があるしな
オレの身体も、和葉の身体も、もう自分だけ
のもんや無いってわかったから
美味しいとも思わんかったし、親父らが昔は
吸うてたのを完全にやめたのは、オカンやら
和葉の亡くなった母親の事があったからやっ
て事も理解したからな
酒はまぁ、飲めるとわかったし、和葉はあま
り飲ませへん方がええと思うのもわかったし
まぁ、ええ勉強になった
ドライブして、散歩して、キスしてハグして
抱き合うて
まともな事件無しの旅行なん、殆どした事が
無かったから、新婚旅行云々の楽しさも加わ
って、オレも和葉もハイテンションで満喫し
たんや
のびのびして笑う和葉を傍に置いて、あちこ
ち旅するんはめっちゃ楽しかった
1週間なんかあっちゅう間に過ぎてもうて、
遅れてやって来たオカンの手を借りて、引っ
越し作業に頑張った
アパートは、入居する際に自分で改装しろと
言われて、他の住人の部屋を見せてもろうて
オカンと相談して、1LDK仕様に改装した
全体的に、服部邸のオレらの部屋と同じ様な
感じに仕上げたんや
シンプルに、機能的に、な
和葉もオレも、ごちゃごちゃした感じはどう
も苦手やねん
寝室は、ダブルベッドがどーん、とあるだけ
あとはクローゼットと、棚が作りつけられて
一角を和葉の鏡台がわりのスペースに
リビングは、暖炉を囲むように、ベッドにも
変身するソファとテーブル
作りつけた棚には、本やらパソコン関係のも
のを置けるようにした
キッチンは、赤で木目調と合わせた
ダイニングテーブルも同じ素材
ほかの部屋は全部白い壁とダークブラウンの
木目調で揃えてみたんやけど、キッチンだけ
は明るめのシステムキッチンにしたんや
オーブンは作りつけやしな
和葉は初めて見るんや
楽しみにしとる言うてな
「うわぁ！素敵や！」
キッチンも使いやすそうとはしゃいだ和葉は
数日後、オカンが帰国してまうと、めっちゃ
落ち込んでしもうた
仕方ない
和葉のやつ、マリッジブルーになったんやけ
ど、その時の理由も、オカンやってん
小さな頃から、何かあればオカンのところに
駆け込んでたからなぁ
こればかりはしゃーないねん
オレは、ソファに寝そべって、腹の上に和葉
を乗せて、背中をさすったり、頭を撫でてや
ったり、キスしたりして慰めてたんや
グズグズ泣いてた和葉に、そんなんやオカン
に私の娘や無いって叱られるでー、と言うと
それは嫌や、と言うて、漸く元気になった
和葉、オマエは旦那になったオレよりオカン
が恋しいって、どないなってんねん、と思っ
たけど、まぁオレに甘えて元気になってくれ
たから、まだ良しとしよう、と思うたオレや
った
一緒に買い物に行ったり、散歩したり、和葉
の友人らに会ったりと、2人だけの日々はそ
れなりに過ぎて行く
こっちの生活の足として、5ドアのMINIと、
バイク2台を手に入れたオレら
クルマだけ、中古やけど自分らで買って、後
のバイクは、和葉のホストファミリーやった
家族と、工藤の母ちゃんから譲り受けたんや
ドライブしたり、ツーリングに出かけてみた
りしながら、少しずつ、自分らの行動範囲を
広げ、生活する場所を知るようになり、漸く
和葉も普通になってくれた
そんな時、和葉の友人からオレに探偵として
の依頼が舞い込んで来たんや
「気をつけてや？」
行ってらっしゃい、と言う和葉とハグしてか
らキスして部屋を出た
今日は近場なので、バイクでアパートを出た
看護師をやっとると言うその人は、引っ越し
したばかりで忙しいのに悪い、と言うたけど
気にせんでええ、と言うて、事情を聞いた
数ヶ月前に彼氏と別れた後、何度か空き巣に
入られた、と言うんや
それも、特に何を盗まれたワケでは無い、と
ただ、今回は何か気持ち悪い、と
部屋をチェックして、オレはすぐに警察を呼
んだ方がええと判断して、和葉の元ホームス
テイ先へ連絡して相談した
すぐに駆けつけてくれて、現場写真を抑えて
一緒に捜査して、犯人はスピード検挙された
犯人は、元彼氏やなくてその友人やってん
彼女らのカップルが別れさせられるきっかけ
を作ったのは、そいつやった
ある事ない事男に吹き込んだんや
彼女がずっと好きやったらしい
別れたら、自分の方にチャンスが来ると思う
てたのに、一向に見向きもされん事に焦り、
彼女の家に盗聴器を仕掛けたらしいんや
騒ぎを知り駆けつけた元彼氏に彼女を預けて
オレは和葉の元に戻ることにした
費用を、と言う彼女に、今日は交通費も対し
てかかってへんし要らん、その代わり、これ
からも和葉共々よろしゅう、と言うて終えた
帰宅すると、和葉が飛び出して来た
お帰り！と出て来た和葉にキスをして、部屋
に入ると、友達からお礼の電話があった、と
旦那、めっちゃカッコエエねって言われた、
と照れ笑いする和葉に、こっちの方が悶絶し
そうやった
和葉と差し向かいで夕飯を食べてると、チャ
イムが鳴った
彼氏とやり直す事にしたと言う彼女が、お礼
を受け取らんかったオレに、悪いからと言う
て、彼氏の勤務先のパン屋で一番人気やと言
うパンやらパイやらを届けてくれたんや
4人でお茶して、喋り倒して楽しい時間を過
ごした
いつも思う、和葉は凄いなぁって
ケラケラ笑って、喋る和葉は、いつでもどこ
でも変わらない
人を繋ぎ、縁を結んで行くんや
向日葵のような笑顔は、こちらでも健在で、
八百屋のおっちゃんも、花屋のおばちゃんも
可愛ええ嬢ちゃん、言うてぎょうさんオマケ
してくれるくらいや
和葉がひとりで頑張った短期留学のおかげで
こっちでもどんどん人脈が広がってる
みんな、和葉が旦那連れて来たでってびっく
りしとるけど、めっちゃ歓迎してくれた
それもこれも、和葉が地道に苦労してコツコ
ツ増やして来た大事な宝物や
オレは、和葉の名を汚さんよう、ちゃんとせ
なアカン、と思うようになった
結婚したい、と言うた時、親父が言うた言葉
の意味を、オレはこっちに来て噛み締めてる
オレの一挙手一投足で、和葉やおっちゃんの
周囲が見る目が変わる
ダイレクトに、影響を与えるんや、その事を
絶対に忘れるな、とな
友人を見送り、和葉と一緒に部屋に戻り一緒
に片付けをする
和葉は上機嫌でよう喋り笑った
「さ、ほな奥さま、お風呂へ参りましょか」
へ？い、嫌や！遠慮するわ！
と言う和葉を取っ捕まえて、肩に担いで風呂
へ向かった
恥ずかしい、と言う嫁に、今更何を、と言う
てぽかすか殴られながら、一緒に風呂に入っ
たオレは、幸せやなぁ、と思いながら和葉に
キスをした
第3章へ
to be continued
0コメント