Stay with me 完全版_10

最終章 Stay with me

追試の連中に混ざって、学年末試験を受ける
和葉を連れて、学校へ向かう

恋人になって、最初の登校やし、どうしても
一緒に行きたいと思うてたんや

案の定、オレと一緒に現れた和葉に、周囲は
大騒ぎ
今日は、追試組みと、部活組み以外は休みの
日やと言うのに、これや
やっぱり、ついてきて正解やったな、と思う

「ほな、和葉、昼飯の時間に来るよって
頑張れや?」

「うん、おおきに」

和葉の教室に、先生が入るのを見て、オレは
その教室を離れて、図書館へと向かう
事件絡みの資料を探すため、一般生徒はあま
り入らんエリアで資料を探し、調べ物に没頭
していると、暫くしてガヤガヤ騒ぐ声がした

「遠山が登校して来たって?」
「何か、めっちゃ綺麗になったみたいやで」

遠山が、遠山先輩が、と言う声に
あー、やっぱり、と思うたオレは、ため息

オレが見ても、そう思うたからなぁ
さらに凛とした、言うか、何と言うか

ヤイヤイ騒ぐ奴らに気付かれんように図書館
を抜け出して、和葉を迎えに教室へと向かう
案の定、騒がしい連中が和葉にちょっかいを
出そうとするのを止めた

「和葉、腹減った」

そう言うて、2人分の弁当が入ったバッグを
奪い、手を引いて歩く

剣道部と合気道部の格技場付近で、和葉には
タオルを敷いてやって座らせて、一緒に昼飯
を食べた

午前中の試験の様子を確認し、午後の試験の
山を張ってやって、最終確認をして、和葉を
教室まで送り、オレは午後から現れた部活の
顧問の元を訪ねた

進路指導担当やねん
オレも和葉も留学を検討したい、言うたら、
色々と提案してくれとって、課題も考えてく
れてん

和葉と2人分の課題を提出して、次のお題を
貰うて、出願に必要な書類の事とか注意事項
を確認して、終わる頃には和葉も試験を終え

「和葉、帰るで」

荷物を纒めた和葉と一緒に手を繋いで学校を
後にした
今日はこのまま、和葉を連れて家に帰り、少
し休ませて、夜から移動やねん

デート、したいんやけど、その暇が無いオレ
らやった

「お帰り、あ、順番にお風呂、入っちゃって
な?」

それから、和葉ちゃん、髪は解いておいてや
って言うオカン

言われた和葉とオレは、風呂上がりに少し涼
んでから眠り、迎えに来た車に乗り込んだ

現地に到着するなり、別々の控室に放り込ま
れて、着替えやら何やら、さっさとされて、
別の車に乗せられて移動した

「うわぁ、めっちゃキレイや!!」

車から降りて、空を見上げた和葉が上げた声
に、みんながふっと和んだのを感じる

久しぶりやー、こんな空見るの、と、嬉しそ
うな顔ではしゃぐ和葉を、カメラマンはもう
遠巻きに撮り始めている

正確には、車に乗る少し前からカメラは回さ
れてん

撮影に慣れてへん和葉のために、出来るだけ
撮影を意識させんで撮ろうと言うカメラマン
の指示やってん

オレらに特に指示は無い
撮影したいんは、ブランドの服を着たカップ
ルを撮りたい、だけやから

出来るだけ自然に
寄り添う2人が撮れたら、今日は終わり、と
言われとる

「主役は服や
どんな日常の中で、どんな人が着たら、どん
な風に映るかなってところが撮れたらそれで
ええねん」

リエさんはそう言うた
今回は、カップルでも、シングルでも普段に
ちょっとだけプラスアルファを感じさせる服
それがテーマやからって

だから、著名なモデルよりも、有名なタレン
トよりも、身近なイメージが持ちやすい人が
ええとなったらしい

フェイスラインは顎までしか出さん
それは、リエさんが、広告を見た人が自由に
イメージしたらええと思うと言うたから

それに、オレ、顔出しNGやしな
オレがカメラマンに言われたんは、和葉とと
にかく普段通りにしろ、と言う事だけ
いちゃつくもよし、喧嘩するもよし、と

スタッフが小道具で用意してくれた望遠鏡を
担いで、和葉と高台近くまで手を繋いで歩く

まだ撮影準備に時間、かかるみたいやからと
か何とか言うて、和葉と望遠鏡覗いたり、し
て適当におしゃべりしとるオレ

服も風になびいて、和葉によう似合うてた
風が冷たいから、襟やストールを直してやっ
たりしてみたりもする

すぐに遠くからOKサインが出たので、和葉
に自分が着ていたジャケットを着せて車に戻
った

「ギリギリかなー」

海岸へと車を走らせながら、オレ達は次の服
に着替えさせられた
和葉は、髪型も変えられて

「和葉ちゃん、カメラ、持って来た?」
「はい」

カメラマンから、次の場所で、好きに撮っていいよ、と言われる和葉

「すっごくいいもん、見えるよ」

めっちゃイケメンのカメラマンは、そう言うと、車が着いたら、服部くんとすぐ向かうと良い、と笑う

海岸にさしかかり、そのいいもんがもしかして、と思う

「和葉、時間無いからすぐ行くで」
「うん、カメラもバッチリや」

車が着いてすぐ、オレと和葉は飛び出した

日の出が間も無くなんや
海岸線、カメラを構える和葉をバッグハグして2人で日の出を待つ

ここや、言うタイミングで、和葉がシャッタ
ーを切る

「平次!」
くるっ、と振り返る和葉が、いきなり自撮りで2人の写真を撮り始める

「めっちゃ、綺麗やね〜」

和葉が色々シャッターを切るのに付き添いながら、和葉を抱き上げたり、振り回したりしながら、少しずつ、カメラマンの合図に応え位置を変える

「和葉ちゃーん!」

オカンの声に和葉が振り向く瞬間、和葉をバッグハグしたまんま、オレもそっちを見た

「よし!オッケー!」

バッチリ、いい写真、撮れたよと言うカメラマンは、仕上がり、楽しみにして、と笑う

和葉は、いつ撮影してたん?と不思議顔
今日はもうこのまま、後は自由に和葉がカメラで遊んだら終わり、と言われる

オカンは、スタッフさんらと打ち合わせがあるとかで行ってしまい、オレは思いがけず和葉と2人、自由時間を手に入れた

キスして、ハグして、ごく普通のカップルのデートを目一杯、堪能した

ちょっとだけメイクして
ハーフアップにされた髪はくるくるしてて
ワンピースも、ジャケットがわりのシャツも
和葉によう似合うてた

無理に背伸びしてへん程度のオシャレ、か

こら、売れるやろな、と言う予感はあったけど、オレらの予想をはるかに超える勢いで、
話題になってもうた広告
シークレットモデルは誰だ?と騒ぎになる事
を、この時のオレらはまだ知らない

数日後

オープニングセレモニーの様子を、和葉と2人、服部邸の客間で寝ながら見ていた

あの日、あの後はしゃぎ過ぎたオレ達は、物の見事に揃って風邪を引いたんや

「ウチのボンは、ホンマにアホやぁ」

せっかく、千載一遇のチャンスを与えてやったのに、和葉ちゃんまで風邪引かせよって
これや、ええ事、出来ひんやん

「オカン!」「おばちゃん!」
「「ビエーックションっ!」」

和葉と2人、同じ部屋に寝かされて
間にオカンが陣取り看病してくれる様子を、
府警から入れ替わり、立ち替わり見舞いが来てん

「何や、静さんええなぁ、オレもここで寝たいなぁ」
可愛ええ娘と、平ちゃん、独占出来るやん

おっちゃんはそう言うてからかうし、終いには親父まで、静はズルいと始まって

和葉と2人、ゴホゴホ咳をしながら

「「1日も早う、回復せんと」」
と誓いあった

それにしても、プロは凄いと思う
フェイスラインから下しか写ってへんけど、ちゃんと恋人同士に見えるんや

楽しそうな休日を満喫する2人
繋いだ手も、寄り添い映る姿も

バラバラのショットから、2人寄り添うショ
ットまで、連作になっとる写真は、よう撮れてたんや

オレの元には、ちゃんと顔が映る写真があんねん

それが、オレが和葉を説得する条件やってん

まだ、恋人になったばっかりのオレらを、残しておきたい、と思うたんや

いつか、和葉と2人、ジジババになった時、こんな日もあったなぁ、って笑えるように

間も無く結納を交わし、正式に和葉は許嫁になり、オレの婚約者になってまう

それは、嬉しい事やけど
ごく短い恋人期間の和葉を、ちゃんと見て、ちゃんと覚えていようと思うんや

それは、あの亡くなったカップルが、和葉がオレに教えてくれた事やからな

当たり前の明日など無い
どんな事があっても、後悔せんように
毎日を全力で丁寧に生きる

その傍にはいつも和葉が居て、オレが居る
これからも、ずっと

Stay with me 
Fin.

7th heaven side B

Ame&Pixivにて公開した二次創作のお話を纏めて完成版として倉庫代わりに置いています^ ^

0コメント

  • 1000 / 1000