Stay with me 完全版_6

第5章 君の不在

和葉が居らん、と言うだけで、オレの日常は
ぐっちゃぐちゃになった

まず、和葉の短期留学が知らされ、高2の間
はもうクラスには戻らんと判ると
煩い連中が偉そうにのさばって来た

オレのファンクラブやっちゅうんやけど、そ
の対象であるオレの気持ちは完全無視

休みのたんびに、団体でクラスに現れてはオ
レの傍を取り囲み、他の連中が近寄るのを阻
止しようとするは、勝手に交通整理を始めて
みたり

部活も邪魔に来たし、登下校にまで関与しよ
うとちょろちょろしよったんや

たった1日目で、この騒動やった

「お弁当は私が」
「デートしたいです」

勝手な申し出と、勝手なお願い事項が山の様
に積み上がり、オレは嫌気を通り越して吐き
気がした

どうしたら、そんな事が出来るんやろか?と

オレの予定を勝手に管理しようとしたり、オ
レのデートや告白の順番を勝手に決めようと
したり?

和葉が居らん、言うだけで、突然ファンクラ
ブの重鎮メンバーやっちゅう奴らがのさばっ
て来て、明日以降、オレの事は自分らが護る
とか言い出して

勝手にオカンに挨拶までしようとしたんや

和葉に変な噂が立たんように、初日やし、と
オレなりに我慢したんがアカンかったらしい

年度末にケガで休養し、そのまま海外留学に
出たとあって、和葉に変な噂が立ったんや

生徒の中には、和葉の家に強盗が入った事を
知ってる奴も居って
和葉は、性的被害を受けたんや無いか、とか
色々な事を言われとって

事情を説明すべきかどうか、悩んだオレは、
今日は何もコメントせえへんかったんや

それが余計、騒ぎを引き起こす結果になって
しもうたので、翌日、オレは登校して事情を
話して、ついでに彼女が出来た事も公表しよ
うと決意した

ところが

どこで嗅ぎつけたんか、「葉っぱちゃん」と
呼ぶ和葉が居らん事を知って、紅葉が現れて
しもうたんや

当然、アイツはオレを「未来の旦那さん」と
言うわ何やで大騒ぎになり

オレは登校するなり、先生から説教を喰らう
ハメになった

紅葉の登場に荒れた騒々しい面々が、どう言
う事なん?と詰め寄るわ

和葉の熱烈なファンからは、服部、二股はア
カン、あのオンナを選ぶなら、和葉は解放せ
よと言われるわ

とうとうオレは、キレた

どいつも、こいつも、ええ加減にせえって

「和葉は、ホンマに強盗の被害には遭ってへ
んで!」

和葉が体調崩してたんで、病院連れて行って
る間に強盗が入ったんや
せやから、和葉は強盗と対面もしてへん

「ちなみにその事は、その時間一緒に居たオ
レと、オレのオカンと医師が証人やから、絶
対に、間違いあらへん」

あと、と言うた後、声を張り上げた

「オレのオンナは和葉だけや!
誰にもやらんし、和葉以外に婚約者も彼女も
ついでに言うなら愛人も居らん!」

悲鳴と怒号と歓声が入り混じる教室に、先生
が登場した 

「な、そう言う事や
遠山の短期留学の件は、半年前から決まって
たんや」

騒ぎになるから、出発前に自分で言いたいっ
て言うてたんやけどな、風邪拗らせてしもう
てアカンかったんや

ちゃんと休む時に診断書ももろうてるし、家
族からの届け出もあったから、間違いないで

それから、と言うと、先生はオレに言う

「愛人も居らんは、当然やな、服部
そんなん居ったら、いくらオマエでも一発退
場やからな」

取り敢えず、元気が有り余ってるようなんで
服部は部活、特別強化メニュー確定や

そんでもって、関係無いクラスのやつでここ
に残ってる奴らも、それぞれ何か懲罰を喰ら
いたいんか?

そう言うた途端、蜘蛛の子散らすように消え
る面々

その後、有言実行でしごかれたオレを、今度
は自宅に紅葉が待ち構えとると言う地獄

「どう言う事ですか?」

まさか、葉っぱちゃんが言い寄ったんじゃ?
と言う紅葉に告げた

「どうもこうもない
最初から、オレには和葉だけや」

プロポーズは、オレがした
和葉は仰天しとっただけやし

納得出来ん、と言う顔をした紅葉に言うた

そもそも、ガキの時に飛び入り参加したあの大会かて、和葉にええとこ見せたい、凄いねって言わせたい、ってだけで参加したんや

誤解させるような慰め方してしもうた事は詫
びるけど、オレが生命張って護るんは和葉だけやし

「それになぁ、何や自分、和葉にただの葉っぱや言うたんやて?ちびっこ達がこの間、オ
レん事捕まえて、めっちゃ言うてたわ」

「ちょっと待って下さい」
和葉ちゃんから聞いたんとちゃいます?

「いんや、和葉は、一言も言うてへんで?」

オレも、あのちびっこ達に訊くまで、和葉のあの闘いの裏に何があったんかも、何も知ら
んかったし

そう、オレはホンマに知らんかったんや

「アイツは、ただの葉っぱちゃうで?
ちゃんと、人を和ませる事が出来る、立派な葉っぱや」

おっちゃんやおばちゃんが、愛情込めて付け
た名前やし、それをアイツは誇りに思うてる

勝手に侮辱するんは、おっちゃんやおばちゃんに失礼や

アンタがそれを口にする権利は無いやろ?

「オレがアンタを名前で呼んだんは、苗字が呼びにくいからや」

後は、和葉とおんなじ、葉っぱの名前やな、と思うただけで、優劣付けようなん気もなかったし

「和葉は、アンタが和葉に向けた悪意にまだ気付いてへん」

せやから、今のうちに、止めろ

アンタが騒ごうが、アンタの実家が騒ごうが
アンタに付いとる執事が何かしようが、状況
は何も変わらん

和葉はオレの恋人になったし、許嫁や
もう間も無く正式に婚約者になる
これは、一族の承諾もある話やねん

「クイーン候補やなく、ホンマのクイーンになれや、紅葉」

敬愛しとる師匠の哀しい結末を、そのままにしてええんか?

和葉に要らんちょっかい出す暇があったら、
正統派のクイーンらしい振る舞いを身に付け
たらどうや?

取材のたんびにオレ引き合いに出さんとき?
オレなんかより、もっとええ旦那が現れる
その時、その旦那を傷付けるような過去の話
を、不用意にメディアに残すなや

未来のアンタが泣くで?
未来のアンタの子供や親や旦那もや

オレは、ちゃんと果たすべき約束を果たして
和葉に結婚申し込む権利を得てから、プロポ
ーズしたし

もうそれは反故には出来んし、する気も無い

「本気で挑まんと、候補で終わってまうで?
ライバルは仰山居るし、今日も何処かで和葉みたいなダークホースが現れてるかもな」

アンタならなれる
本気で挑まんとアカンやろうけど

師匠の教え、アンタで終わりにする気か?

「先生の話を持ち出すんは、卑怯や」

でも、葉っぱちゃんに負けた理由は、私なりに理解出来た気がします

「ホンマに悔しいけど、私の負けや
私は、私の道を歩いて行きます」

そう言うて、オカンにオレの母親と知らずに
失礼を、と詫びて帰って行った紅葉やった

翌日も騒がしい周囲に、オレは一枚の写真を
提供した

別れの日、和葉を腕に抱いて自撮りした一枚

さり気なく、互いの指に揃いの指輪が光る、
その一枚は、オレのお気に入り

優しい笑みを浮かべている和葉を見れば、ア
イツがどんな様子で旅立ったかわかるやろ? 

穏やかな笑みは、安心と希望で占められとる
それに、どう見ても、幸せなカップル以外には見えへんし

それがダメ押しになったらしく、完全には戻らないものの、何とか日常を取り戻し始めた

和葉の不在は、オレに強烈なダメージを与え
そして、和葉に対する想いを、更に深く、確
実なものにした
 

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to be continued 

7th heaven side B

Ame&Pixivにて公開した二次創作のお話を纏めて完成版として倉庫代わりに置いています^ ^

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