Stay with me 完全版_4
第3章 告白
家をめちゃくちゃにされた事
自分が狙われた事
それも確かにショックやったけど、何よりも
辛かったんは、お母ちゃんや平次との思い出
の品を失った事
それらは、もう、買い直しもやり直しもきか
へん宝物ばかりやったから
もう、二度と取り返す事は出来ん
でも、平次は言うた
お母ちゃんなら、きっとこう言うやろうと
「モノはいつか壊れる
でも、心の中に刻んだ想い出は、誰にも壊す
事も盗む事も出来ん」
散々泣いて、そのまま眠ってしもうた私を、
平次は抱えたまんまで寝たらしい
翌朝目が覚めた時、びっくりしたけれど、め
ちゃくちゃ安心もした
私の家から背負って帰って来て、そのまま寝
たらしいっておばちゃんは笑ってた
目を覚ました平次は、ホンマにオマエは、と
言うて、私の髪をぐっしゃぐしゃにした
結局、私は年内の登校は見送る事になった
学校側から、事件の件でざわついている事と
私の病気が完治するまでは、と強く言われた
らしく
(ほな、出発前に、みんなに挨拶出来ひん
ままや)
落ち込む私を、おばちゃんが励ましてくれた
私も回復したし、と言う事で、おばちゃんが
平次と一緒に出かけて来なさい、言うて送り
出してくれたんは、留学2週間前の事やった
「ほな、和葉、ええとこ行こうや」
そう言う平次に乗せて貰うたバイクも久しぶ
りで、ウキウキしたけど、どうせ何かの依頼
か事件やな、と思うてた私
「依頼?事件?何のや??」
ぽかん、とした顔の平次が、ヘルメットを愛
車に括る
?
「ただのお出かけや、事件や無い」
「え?」
オレもオマエも家の中ばっかり居ったやろ?
せやから、少し運動せえっちゅう事や
遊びに来ただけで、事件の予定も依頼の予定
も無いで?
「オマエ、来たい、言うてたやろ?神戸」
「うん」
「ついでに、おばちゃんのところも寄ってく
から、途中で花、買うで」
と言うと、歩き出す平次
「ん」
肘を出されて立ち止まる
?
ため息を吐いた平次が、私の手を自分の腕に
掛けた
「今日は、事件も依頼も呼び出しも絶対無い
で」
「何で?」
「オレ、携帯持ってへんからや」
「は??」
オマエの新しいスマホなら、ここに在ると言
うて渡される
「救出出来る限りのデータは、突っ込んでも
ろうたけど、完全や無いって言うてた」
一応、アドレスとか番号は変えてへんと言う
おばちゃんが、破壊された部屋の中から拾っ
て来てくれたらしい
でも、破壊されとって、使い物にはならへん
かったから、と、平次の機種変にあわせて、
私のも新しいやつにしてくれたらしいねん
「可愛ええな」
渡されたスマホには、保護ケースも付いてて
ちゃんとストラップもされとって、保護シー
ルまで貼ってあった
「オマエの看病の間、ヒマやったからオレと
オカンで遊んだんや」
私が寝てる間は相当ヒマやったらしく、おば
ちゃんとそんなんして遊んでたと言う平次
ストラップはおそらくおばちゃん特製や
最近、組紐に凝ってたからな
色遣いもええ
「それ、オレも強制的に色違いや」
おばちゃんは、平次の分も編んで、お守りと
それ以外は付けたらアカン、と言うたらしい
家に帰ったら見てみたらええ、と苦笑する
「と言うワケで、万が一の緊急連絡は和葉の
携帯が鳴るさかい、よろしゅうな」
離れると面倒やから、と、腕を組んだまま、
平次は歩き出した
隣を歩く事は多いけど、手を繋いだり、まし
て腕を組んで歩くなど、殆ど無い
(緊急避難時を除く、やで?)
おまけに、人ごみ嫌いなクセに、商業施設を
一緒に歩いてくれるやなんて
「私、死ぬんやろか?」
「あ??」
何を突然、と呆れる平次を見上げる
(ん???)
「なぁ、平次、アンタ背、伸びた??」
「オレか?判らんけど…伸びた、んかな」
「ほな、もしかして、今日の靴、シークレッ
ト何ちゃら?」
アホな事ばっか言うなや、と小突かれる
(うん、これが正常、やな)
「何をホッとした顔しとんのや、ホンマに変
なやっちゃなー」
寄ってみたかったお店も、カフェも寄ったし
あちこち歩き回って、楽しい時間を過ごす
服部邸で静養しとる間、ずーっと平次は一緒
に居てくれて
夜も一緒に寝たし(おばちゃん時々参加しと
ったけど)
お昼寝したり、音楽聞いたり、本を読んだり
中庭ぼんやり眺めたり
ごくごくのんびりとした時間を過ごせたんや
誰も邪魔せん、穏やかで静かな時間
平次を独り占め出来て、めっちゃ幸せやった
けど、平次は色々動けんで、大変やったろう
なぁと思うと、申し訳なくて
今日かて、事件が絡まん2人だけの外出は、
ホンマにスペシャルな事やねん
おまけに、腕組んでええって平次の方から言
うやなんて、ほぼ初めての事や
いっつも、混雑しとる所とか、私がお願いし
て手を繋いでもらうんも、ギリギリやし、時
には嫌がられる事もあんのに
おまけに、今日はめっちゃご機嫌や
歩くのも、私のペースに合わせてくれとるし
?がいっぱいやったけど、ご機嫌な平次につ
いて歩いて、公園みたいな広場に着いた
めっちゃ景色がええ公園や
「なぁ、和葉」
「ん?」
この公園、知っとるか?
知らん、と言うた私に、平次が言う
「おっちゃんと、おばちゃんがようデートし
とった想い出の場所やねんて」
「へ?」
「今日、立ち寄った場所のいくつかもそうや
ねん」
「ホンマに?」
誰に訊いたん??
そう言うた私に、少しはお母ちゃんから、殆
どはお父ちゃんから教えてもろうた、と言う
娘の私かて、知らん場所ばっかりや
「ちなみに、この公園には2つ意味がある」
「2つ?」
せや、何だかわかるか?と言う平次に、首を
振ると、せやろ?と笑う
平次、こんな穏やかな笑み、出来るんや、と
ぽーっとなってまう
「和葉」
はい、と言うと、平次が両手を握る
「平次?」
一瞬、頭が真っ白になった
平次が、何かを言うたんやけど、それがよう
聴こえんかったんや
好き?今、好きって言うたん??
平次が、誰を??
「オマエ、ホンマに今日は、おかしいで?
オマエが好きや、一緒になってくれ、言うて
んのに、オレがオマエやない誰に言うねん」
「あぁ、好き、一緒に、な…はい????」
(え、あの、何、何が起きてんの???)
あー、もうっ、と言うと、握られていた手を
引っ張られて、平次にぶつかる
「ここは、おっちゃんがおばちゃんにプロポ
ーズ、した場所で」
もうひとつは、オマエが出来たって、おばち
ゃんがおっちゃんに告白した場所やねんて
と耳打ちされる
「せやから、オマエに言うんやったら、ここ
しか無いって思うたんや」
宥めるように背中をさすってくれる大きな手
は、もう昔一緒に遊んだりして繋いでた手と
は違うけれど
今までも、今でも私を絶対に護ってくれる手
やねん
ずっと、傍に在って欲しい手
「オレは、最初も最後もオマエがええ」
ぎゅっ、と抱きしめられて眩暈がしそう
「ホンマなん?後でやっぱ無し、とか、返品
は出来へんで?撤回も出来んけど」
ホンマに、私でええの?
いつもみたいに、期待させといて、後でやっ
ぱ無しとか言われても私、立ち直れへんよ?
思うだけで哀しくて、涙が出る
「言わんし、ちゃんと証拠も証人も、承認も
もろうてある」
証拠に、証人に、承認??
まず、証拠は、コレや
平次が、私の手に何かを付けた
「ふぇ??」
銀色のキラキラ光る輪っかが、左手の薬指に
在った
「オレが本気やって言う証人は、オマエの親
父や」
「お父ちゃん??」
「せや、ちゃんと勝負に勝って、和葉をくれ
って言うたし、親父もオカンも立ち会ってた
から間違いないやろ」
しょ、勝負って、何を????
ま、それは置いておいて、と言う平次が、1
通の書類を出した
和紙に、認められた達筆な文字は、間違いな
くおっちゃんの字やった
要約すると、平次の申し出により、私が許諾
した場合は、私を平次の許嫁とする事を承諾
すると書いてあんねん
おっちゃんと、おばちゃんの署名入りで、そ
ればかりか、ガチの印鑑も押されとる
「コレで、全部揃うやろ?」
平次は、首から鎖を外すと、私の手に置いた
「オマエが受け入れてくれる、言うんやった
ら、コレ、オマエがオレに付けろ」
私の指に平次が嵌めたんと、同じ銀の輪っか
デザインも凝ってて、内側に、桜とドナルド
の横顔も見える
HEIJIとKAZUHAの名前の間に、2輪の桜と、
ドナルドの横顔が在ったんや
「これ、平次が考えたん?」
知り合いの職人に頼んだ、と言う平次
ホンマは婚約指輪とか贈るところやろうけど
学生やし、カップルリングがギリやったんや
と言う
「え?平次が出したん??」
大丈夫なん?アンタ、事件で飛び回るお金足りんようになってまうやろが、と言うと、そ
れとは別やから問題無い、と言う
私と平次は、ずっとお小遣い、同額やねん
喧嘩せえへんようにって言われて
せやから、お互いの懐事情はよう判ってて
でも、と言う私に言うた
知り合いやから、破格値でやってもらえた事
将来、働き出したらまたご利用下さいと言う約束やって事
子供の頃から貯めてたもんに手を出した事
「ごちゃごちゃ言わんと、大事にしたらええだけの事やって」
そう言うと、また穏やかに笑う
私の好きな人は、めっちゃカッコええ
ホンマにそう思うた
「あ、あんな、へーじ」
まさか、こんな事になるとは思うてへんかったんやけど
泣き噦りながら、平次に謝った
間も無く、留学で暫く不在になる事、そして
大学は海外に行くつもりやって事
「おぅ、昨日、オカンから聞いた」
正直、めっちゃショックやったし、腹も立っ
たけど、和葉とどう過ごして行きたいか、ちゃんと話さんかったオレが悪い
「へーじ」
「でもな、和葉」
オレの隣、歩きたいって
ずっと傍に居たい、パートナーで在りたいって、和葉がちゃんと自分で考えて、行動して
くれた事が
オレ、めっちゃ嬉しかったんや
オレも、おんなじ事考えてたから
オマエの隣、歩きたいって
ずっと傍に居たいし、相方として、誰にも負けへんオトコでいたいってな
「平次」
「オレん事、置き去りにして行くんや、しっかり頑張って来い」
「うん」
大学は、下見をオマエに任せる
「え?」
「オレな、刑事、目指そう思うてん」
うん、知っとるよ
昔からやもんね
「探偵は、大学までや」
せやから、海外でも通用するんか、腕試ししてみたいんや
社会に出てしもうたら、海外生活なんぞしたくても滅多に出来んやろ?
「オレな、まだ和葉と見てへん景色、ちゃんと一緒に、色々と見ておきたいんや」
お互い、仕事を始めたら、きっと今までのようにはいかんようになる
せやから、最後の学生生活は、一緒に、好きな事を存分に楽しんで、勉強も、プライベー
トも満喫したいねん
だから、オレは最初から大学は、オマエがどこに行くかで、その地にある自分が専攻したい学科があるところを希望するって、決めて
たんや
「平次」
好きやって言われるより、もっと深く必要とされとるってわかって、死ぬ程嬉しかったから、大好きやって気持ちを込めて、ぎゅっと
抱き締めた
お返事は?と言う平次の手に、ちゃんと揃い
の指輪を嵌めてあげた
似合うな、平次、と言うと、急に視界が塞が
れた
平次の顔がめっちゃ近い
おばちゃん似の瞳に、自分が映っとるのが、
何とも言えん
額やら瞼、頬に平次の唇が押し当てられて
大事そうに抱えられてキスを受ける
もう、絶対、逃さへんで?
離さへんけど、ええ?
「「上等や」」
ふっ、とお互い笑うて、どちらからともなく顔を寄せ合い誓いのキスをした
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to be continued
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