Stay with me 完全版_1

序章 オレの和葉のその行方

白状します

戎橋で、「オレの和葉」宣言をして、大勢のオトコ達相手に派手な立ち回りを演じたんは

このオレや

証拠やったら、仰山ある
勿論、麻取のみなさんが証人やし、
たくさんの通行人が騒動の一部始終をWEBにアップしたし
(まぁ、捜査絡みで片っ端から削除依頼は飛んだケド)

博士んとこの小っさい姉ちゃんが、いまだにその時の音源を持っとるし (● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾

それやのに、小狡いオレは、和葉からの追求を交わし続けて、逃げ回って

可愛ええ妹分やの
子分やの
幼なじみにプラス出来るんは、それくらいと言わんばかりの態度で、その発言を認めてへんままや

せやかて、工藤はロンドン、それもビッグベンの前やで?

ナンパの横行しとる、あんな場所が記念の場所になるやなんて、和葉にあんまりやろ?

和葉にとっても、オレにとっても、一生の記
念になるハズの大事な事やろ?

少しでも、和葉に喜んで貰えるように、少し
でも景色のええ場所、思い出に残る場所はっ
て拘ってしまうの、しゃーないと思わんか?

オレの和葉で間違い無いと確信した恋心

気付いてしまってからと言うものの、オレは
オレらしくない行動に出てしもうてるのを、

どうしてアイツだけは、気付いてくれへんのやろうか?

一緒に出掛けた時は、ちゃんと送るし、それが出来ひん時は、ちゃんと言うし

景色がええ場所の依頼の時は、連れて行くし
オレなりに、告白する機会は狙うてるし、

そのためにも、と、関西近郊のデートスポットは調べ尽くしたし?

当然やけど、和葉のピンチは生命張って護るのは今でも変わらんし

この間の皐月堂からの大脱出で、あの行動で
少しは気付いてくれたやろ、思うたけど、ま
たしても、最後の最後で和葉からの追求をか
わしてしまい、

その結果、後日、オレには大ピンチが訪れた

あの事件後、ちょいちょい執事共々現れるようになった紅葉

積極的な姉ちゃんで、和葉と何かと言うと争
うてたんやけど、そのうち、和葉の方があの
姉ちゃんが現れると、いつの間にかオレの傍から消えるようになってん

そればかりか、服部邸にもよう来えへんようになって、それ以前は、オレが居らんでも家に普通に居ったくらいやのに、全然来てくれへん、と、オカンから苦情が入った

和葉を呼んで、久しぶりに親父も、和葉の親
父も揃い、フルメンバーでの夕食に、オカン
が浮かれていた食卓に、和葉が爆弾発言をしたんや

「おばちゃん、堪忍やで
私、もう平次のお姉さん役、出来ひんの」
平次に、妹分呼ばわりされてしもうたし

真剣な顔で、ホンマに申し訳無いと言うた表
情の和葉に、オレは大慌て

「平次には、初恋の人が現れたみたいやし、
理想のタイプの胸の大きな人に出会えたみたいやし、もう、私はお役御免や」

うっすらと、大きな黒い瞳には、涙も浮かべ
はっきりキッパリ、意味がわからん事を言う和葉に、オレばかりか、みんなが動きを止め
てしもうたんや

箸を落とす親父に、唖然と言うた表情で娘とオレを見るおっちゃん
オレに、夜叉のような表情を浮かべたオカン
に、凍りつくオレ
ゴメンな、と言いながらも、見事に服部邸を修羅場と化してくれた和葉

場所に拘り、明言を避けた事で深く和葉を傷付けてしもうた事だけは辛うじて理解した

スマン、和葉
確かに、妹分発言は余計やったな

せめて、この間の大脱出後には、ちゃんと認
められへんでも、せめてもうちょい待っとけ
くらいは言うとくべきやった

その夜、久しぶりにオカンから厳しい指導がオレに入ったんは言うまでもなく

オレは必死に和葉を連れ出す口実を捜しては
連れ歩いたんやけど

オレと工藤が揃うと事件が起きて、巷で噂されとる死神伝説がホンモノやったんか

和葉とは、まともにデートっぽい雰囲気さえ出せず、ただ振り回すだけになってしもうて

放した分の約束の穴埋めは、何を提案しても
和葉に拒否されてしまい、約束すらさせてもらえへんようになった

そうしとる間に、完全に和葉が服部邸に現れんようになってしまい、オカンにはとうとうキレられて、
オレはもう、どうしてええんか、お手上げ状
態になりかけとったんや

事件に飛び出しても、あわやの大失態を犯しそうになり

剣道の稽古に出ても、幼なじみで副主将の晃
にあっさり一本獲られて

「集中出来ん奴は、ここには要らん💢」

言うて、当面部活への出入りを禁じられ

府警の道場に行けば、今日の平ちゃんは危な
いから怪我する前に帰った方がええと言われ
抜き打ちテストでは、初の赤点を取ると言う
始末

とうとう肝心の和葉本人に心配される事態に

「平次、アンタ事件で何かあったん?」
心配そうに覗き込まれたオレ

(...事件やない、全部、オマエのせいや)

「え?」

あっしまった、と思うた時は、もう遅かった
心の声は、声にしてしもうた後で、はっきり
キッパリ、和葉に届いてしもうてん

立ち止まった和葉は、瞳一杯に涙を浮かべて
真っ青になっとった

「あ、いや、その、ちゃうねん、あのな...」
「な、何やようわからんけど、ご、ゴメンな
もう、邪魔せんから」

ぎゅ、と鞄を指が真っ白になる程握り締めていた和葉が、制服のスカートを翻して立ち去
った

情けない事に、オレは追いかける事さえ出来んかった

追いかけなアカン事くらい、オレかてわかっとるっちゅうねん

でも、和葉を捕まえたところで、どう話せば
誤解させずに伝えられんのか、わからんかったんや

その場からどうやって帰宅したんかも、実は
よう覚えてない

風呂場で、湯槽に沈みそうになって、漸く、意識が浮上した

このままやったら、絶対に、アカン

急ぎ部屋に戻り、電話やメールで和葉に連絡
するけれど、一切、応答してはもらえへんかった

悪いんはオレやって残したけど、反応は無い
考えてみたら、今年のオレは最低やった
今年はまだ、何かひとつアイツとした約束、果たしてへんのや

海遊館やディズニー、USJへのお出掛けは勿論、誕生日祝いも、バレンタインのお返しも
何もしてへん

オレは、誕生日祝いも、チョコもちゃんと、
貰ったと言うのに

お出掛けの約束を放してしもうた時は、
最初は怒られたり泣かれたりしたんやけど、
その後は、穴埋めの約束すら強請られもせんかったら、受け入れもして貰えてへん

つまり、要するに、オレは、完全に諦められとるっちゅう事や

改めて、現実を直視して、オレは震えた
今のこの状況、告白どころか、もっとヤバい状況やんか、と

焦ったオレは、夜明け直前に、非常識な時間やとは思うたけど、和葉に電話した
出てもらえるまで掛けるつもりやったんやけど、意外にもすぐ取って貰えて

「はい」

声が掠れていたんは、寝起きやからか、泣い
たせいか、胸が痛んだけど、オレは手短に用件を伝えた

事件で、留守にするから、今日は学校に行けへん、と

「...うん、...わかった、...気をつけてな」
「おぅ、ほな行って来る」

行ってらっしゃい、と言う声が、普段の明る
さのカケラも無くて、耳に残る違和感を覚え
つつも、オレは通話を終えて

日が昇りかけの寒い街中を、オレは修理から戻ったばかりの愛車を駆って出た

目指すは神戸

以前、事件絡みで知り合うた人に、昨夜ダメ元でメールしたんや
深夜にも関わらず、すぐに応答があって、いつでもどうぞ、と連絡があった

高級住宅街の片隅で、オーダーメード専門の
工房を営んでいる人で、腕があると目をつけ
られて、犯罪組織に追われたその人をおっちゃんと共に助けた事があんねん

その時、言われたんや
もし、素敵な彼女が出来たら、贈り物を作る
お手伝いならいつでも、と

「すんません、朝早く」
「いえ、老人は朝早いものなので」

穏やかな笑みで、工房の作業部屋に案内してくれたのは、寺井さん
手先が器用で、芸術的な細工を得意とする

言われた通り、和葉とオレの写真を何枚か持
参したオレは、オーダーシートに必要事項を書き込んだ

「愛らしいお嬢様ですね」

写真をテーブルに並べ、スケッチブックを持って来た寺井さんは、さっさと鉛筆を走らせて行く

唖然として見ているオレの目の前で、鮮やか
な手付きで色々な角度からデザイン画を完成
させて行く

ミル打ちされたシンプルなストレートのアームに、真ん中にダイヤを一粒と、それに寄り添うように小さな淡い水色の石が一粒

リングの裏側にHeiji 、Kazuha と名前を並べ
その名前と名前の間に、寄り添う桜が2輪ともう一つの間には、リングを2つ重ねて並べると、ドナルドとデイジーがキスしてる横顔
が浮かぶのだ

ドナルド、デイジー、スヌーピーは、和葉がガキの頃から好きなキャラ
オレも、好きやねん

「服部様のお話ですと、和葉様は長い事贈り
物を大切に使って下さる方のようですので」

表は思い切ってつや消しか打ちっ放しのような雰囲気に仕上げると、オトナになってもしっくり手に馴染むと思います

地金のサンプルを見せてくれて、オレの手にも合わせてくれる

「あぁ、こうしたらいいかも」

更にデッサンを続け、見せてもろうた画
蜂の巣のようなでこぼこしたアームに、斜めに波打つようなデザインが入る

真ん中のダイヤと、その右下に添えられた淡い水色の石から波が立つようなデザインは、
でこぼこはつや消し加工、波が鏡面加工と凝
った造りになっていた

「ほな、コレでお願いします」

こんな、安価でええんか?と言うたんやけど、将来、結婚される際にでもご用命いただけたら、とかわされた

約束の期日までには届けてくれる、言う寺井さんに見送られて、帰阪したんは、ちょうど下校時刻

和葉のメットも持って来てある
和葉に連絡しても繋がらんから、晃に連絡したんやけど

「和葉ちゃん、風邪引いた言うて今日は休みやって翠が言うてたで?」
「は?」

愛車を事故らん程度に駆って、最近越したば
かりの和葉のマンションへ向かい、おっちゃ
んからオレ専用にと預かった合鍵で遠山家に

一応、エントランスでも呼び出したんやけど
反応が無かったんや
せやから、合鍵で入る事にした

「...和葉?和葉!」

廊下に倒れ込んで動かない人影に、夢中で腕
を伸ばして抱き上げた

仰け反る小さな顔を叩いて名を呼んでも反応
が無い
冷えとるのにどこか熱い身体に青い顔
これは、アカン

意識が朦朧としとる様子の和葉に自分のコー
トを着せて背負って、施錠してから遠山家を後にした

和葉にメットを被せるのも一苦労して、力無く寄りかかる和葉の手を、ハンカチで括って
自分の身体に巻きつけ、慎重にバイクを駆って服部邸へ向かう

「オカン!オカン!」

何や、騒々しい、と出て来たオカンも、オレの背中の和葉を見て焦る

「先生、呼んでや!」

せ、せやね、と飛んで行くオカン
和葉を背負い家に入るオレ

背中の和葉は今度は燃えるように熱い
自分の部屋のベッドに慎重に寝かせて、布団
をしっかりかけてやる
青白い顔に、うっすらと冷や汗を浮かべて、
目を覚ます様子も無い

タオルで汗を拭ってやり、氷枕をあててると
漸く先生を連れてオカンが戻って来たので、
交代で部屋を出た

階下の居間に行き、へたりこんでしまう
あの朝の電話の時、ホンマはあいつ、寝起き
やなくて、寝れんで苦しんでたんちゃうかっ
て思うて

何で気がつかへんかったんやろ、と
自分のアホさ加減に、ホンマに嫌気が差す

「和葉ちゃんなぁ、扁桃腺腫らして熱、出て
しもうたみたいや」

ちょっと貧血もあるみたいやし、点滴しても
ろうてるから、もう少ししたら目、覚ますでと言い、オカンはまた階段を上がって行く

まずは、和葉を全快させる事に集中せんとア
カン、と思いながら、オレはオカンと共に診
察を終えた先生を見送った

「平次、和葉ちゃん、逃げんよう見張ってて
や?買い物行ってくるさかい」

意地っ張りで頑固モノは、目を覚ませばきっ
と自力で家に帰ってしまうこと、オカンはよ
う知ってるから、そう言って急ぎ出掛けて行
った

手渡された2人分のスポーツドリンクを手に自分の部屋へ向かったオレ

ベッドの中では、額にタオルを当てられて、和葉は静かに眠っていた

椅子に座り、中庭を眺めながら、和葉が目覚
めるのをじっと待つ

ん、と言う声と、むずがるような気配を感じ慌ててベッドに駆け寄った

ズレ落ちたタオルはテーブルの上に置かれた
氷の張ったたらいに戻し、和葉の熱を帯びた
頬にそっと触れた

「和葉、和葉って」

ゆるゆると開かれた大きな黒い瞳にはいつも
の精彩が無い
ぼんやりと、彷徨う瞳

「…どこ…ここ…へいじ」

まだ熱がひどく高い
朦朧とした意識の中、何度も瞬きをして、目
を覚まそうともがく様子に、そっと手を貸し
て、起き上がらせた

ペットボトルを掴んで、自分もベッドに座り
ぐにゃり、と倒れそうな和葉の熱い身体を自分に寄りかからせた

スポーツドリンクを飲ませようと、ストロー
を咥えさせても、まともに吸い上げる力も無
い様子で、そのまままたうつらうつらと身体
が揺れ始めた

「和葉、ちょっとだけ我慢し」

しっかり和葉を腕に抱き直し、仰け反る小さ
な頭を支える
柔らかい唇に指を突っ込んで少しだけ開かせると、口に含むスポーツドリンクをむせかえ
らないように慎重に飲ませた

何とか飲ませ終えて、汗を拭ってやって、オ
カンが着せたパジャマ代わりの浴衣の襟を直
してやり、しっかり布団をかける

冷たいタオルを絞り、額に置き直してやると
心地ええのか、触れたオレの掌に頬を預ける
ようにして、眠り始めた

運びこんだ時よりは、落ち着いた呼吸
真っ青だった顔は、今度は発熱で真っ赤に染
まりあがっていた

柔らかな、熱を帯びた頬をそっと撫ぜて、見
慣れたはずの幼なじみの、見慣れない寝顔を
眺めていた

早う、元気になってくれ、和葉
オレ、どうしても言いたい事あんねん
オマエに、言わなアカン事があるんや
そのためやったら、何でもする

しばしの間、ベッドに頭を預け、オレも軽く
眠りこんでしまった様子

階下から、オカンの尋常ではない声が聴こえオレは和葉の眠りを妨げんよう静かに部屋を
出て、階下へと足を進めた

「何や、オカン、どないしたん」

和葉なら寝とるで、と言おうとしたオレは、外から聴こえる尋常ではないサイレンに漸く
気が付いた

飛び出そうとしたオレに、手にしていた携帯
を押しつけた

「平次か?和葉は、傍に居るんやな?」
「あぁ、熱出して倒れとったから、家に連れ
帰ったんや
今、オレの部屋で診察も終わって寝とるで」

ほうっとタメ息を吐く音
何やと言うのか

「ええか、ワシが帰るまで、オマエも一歩も
家を出たらアカン
和葉の傍を離れるな、ええな」

事情は帰ってから話すと言い、電話をオカン
と代われ、と言われたので、渡す

この尋常じゃないサイレン音と、和葉の所在
に何か関係があると言うのか

「ちょっと、和葉ちゃん家に行って来る
しばらく、和葉ちゃん家に置かなアカンから
な」

絶対に家を出るな、と念押しをして、オカンは家を出て行った

とりあえず、あれだけ念押しされるとさすが
に不安を覚えて、オレは和葉の眠る自室へと
戻る事にした

Stay with me 完全版_2へ
to be continued 

7th heaven side B

Ame&Pixivにて公開した二次創作のお話を纏めて完成版として倉庫代わりに置いています^ ^

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