から紅の恋歌 「恋歌 上の句 -3」

恋歌 上の句3
3: 紅色の嵐の中で

姉ちゃんが帰った後、オレは漸く自由時間を
与えられ、親父の仮眠室へと引き上げた

着替えをし、ベッドに転がり腕を目に当てて
深呼吸をする

昨日、新幹線の中で絡まれた姉ちゃんらが勝
手に写真を撮ろうとしたんで、断った

「だったら、少しの間、おしゃべりに付き合
って!」

そう言われて、疲れて眠ってる和葉を起こし
かねない騒ぎっぷりに、オレは仕方なく和葉
に帽子被せて、オレの上着を掛けてやって席
を立った

結局、東京近くになっても解放されずに、和
葉が目覚めてしもうて、オレはキレられてし
もうたんや

まぁ、オレがただの幼なじみや言うたんを、
ばっちり聞かれてしもうて、キレられたんや
けどな

東京駅で、和葉を捜そうとしたタイミングで、
例の執事と一緒に紅葉が現れた

オレの最大の失敗は、ここで和葉を捜す事を
諦めてしもうた事

行動予定は知っていたので、先回りしたらえ
えやろ、と思うてしもうたんや

まさか、紅葉が時間があるから一緒に映画に
行く、チケットもある、と言い出すとは思わ
なかったし

上映後に合流したらよろしいわ、と言われて
すぐに上映が始まってしまい、もうどうにも
出来んかったんや

暗くなった映画館は盛況で、和葉を捜すのも
難しかった

姉ちゃんが言う通り、今回の外出を和葉がめ
っちゃ楽しみにしてた事を考えたら、オレは
どんな事をしても和葉の隣に座って、一緒に
見るべきやった

座席取る時、どこがええの何のと言いながら
WEBから一緒に取ったんやから

「オマエはまんまと紅葉の策略にはまっただ
けの事や、情けない!💢」

親父には昨夜、そう激しく叱責されたけど、
その通りで何も言い返せへんかった

映画が終わって、和葉達を見つけた時はほっ
としたし、紅葉がオレの腕掴んだまんまやっ
て事よりも、見つけた和葉の傍に行く事でい
っぱいいっぱいやった

和葉の大きな瞳が哀しそうな瞳でどこかを見
てるのに気が付いた時は、総てが遅かった

慌てて腕をふりほどくオレを、和葉だけやな
くて、工藤らまで冷たい瞳で見てたから

慌てふためく行動も、言い訳を考えるオレの
事も、和葉はお見通しやったんやと思う

和葉は、激昂する事なく、静かに紅葉に指摘
した

紅葉は執事を使い、どんな手を使ったかは知
らんし、知りたくも無いけど、オレらの予定
に合わせて同じ新幹線に乗り、偶然を装って
現れたんや

和葉が立ち去った後、紅葉が言うた

「バレてしもうたんなら仕方無いわ
和葉ちゃんの許可も出た事ですし、うちらは
デート💕しましょうや」って

「何でオレがオマエとデート、せなアカンね
ん💢」
「何でって、ええやないですか、デートのひ
とつやふたつ💕」

初めてや、言うワケやないでしょ?と言う紅
葉の傍に、いきなり執事が現れた

オレは、和葉の指摘がホンマに正しい事を理
解して、まんまと罠にかかった自分に腹が立
った

「誰とデートするかは、自分で決めるし、人
に指図されるのも好きや無い💢」

オマエかて、用事があったから来たんやろう
から、ここでさいなら、や
そう言って、腕を振り払いオレは歩き出そう
としたんやけど、今度は違う面々に見つかっ
てしもうてん

「もしかして、服部平次くんですか?💕」

あ、本物だ!と言う騒がしい面々
おそらく、つい最近の雑誌の取材記事を見た
のやと思う

人に取り囲まれて身動きが取れなくなってし
まい、離れへん紅葉と、その執事に誘導され
て車に乗せられたオレ

「ほら、やっぱりウチと一緒に居った方がえ
えやないの」
「悪いケド、適当なところで降ろしてや!こ
のまま一緒に行く事は出来ん💢」

お嬢様、どうなさいますか、と言う執事に対
し、紅葉は、私は平次くんとご飯食べます、
と勝手なコトを言う

腕を掴もうとするのを拒否しても、今度は上
着を掴んで離さへん

ホンマにイライラして来たオレ

そんな時、オレの携帯が鳴り出した 

「平ちゃんか?今、どこに居るんや💢」
大滝ハンやった

「事件か?」
「事件どころじゃないで、平ちゃん」 

平ちゃんの、捜索願が出されてんのや、府警
は大騒ぎやで?と言う大滝ハン
何で、オレ?

和葉に連絡が取れんと、SOSメールをオカン
に送っていた 
オカンからは、自分もさっきから電話もメー
ルも連絡が取れへんと返って来たばかりや
和葉のが提出されたのなら判る  

何で、オレやねん💢

「平次か」
「親父?」
「今すぐ、その車から飛び降りて死ね!💢死
ねないんやったら、死ぬ気で府警に自分で出
頭しろ!」

せやないと、オマエの車の同乗者全員を、誘
拐の嫌疑で現行犯逮捕、するで?と言う親父
何で親父、オレが車の中やって判ってん?

取り敢えず、親父の怒り様が半端ではなかっ
たんで、オレはわかったと言うて、電話を切
った

「悪いケド、警視庁に迷惑かけるワケにはい
かんのや」
車を停めろと言うて、さもなければ、もう間
も無く後ろの覆面パトに、緊急逮捕されても
知らんでと言うと、慌てて車が停まる

「何?どないしたん?」
紅葉は、ホンマに何も知らんのか、オレと執
事のやり取りや電話の状況に驚いている様子

「知らん、ほな、さいなら」
オレは車を降りて、後ろに停車した佐藤刑事
の車に乗り込んだ

「服部くん」
東京駅に送るから、と言う佐藤刑事の運転で、
あっと言う間に紅葉の車から距離が出来た

珍しく、高木刑事は別の事件に駆り出されて
いて、都内に居ないと言う

オレのトラブルの事情は、聞かれなかったけ
れど、どうも事情を知られている様子

「頑張れ、少年」
あの娘を手に入れるのは、君が想定している
以上に困難かも知れない、と、別れ際に佐藤
刑事はそう言った

本気で挑まんと、取り返しのつかん事になる
って言うてたんや

理由を聞いてる時間はオレには無かった
新大阪駅に到着すると、大滝ハンが渋い顔で
待っていて

「おやっさん、烈火のごとく怒ってんで?平
ちゃん、覚悟、しといた方がええ」
あそこまで怒ってんのは、最近見た事が無い
と言う

「静さんが、家を出てしまいよってん」
「は??」
ちょお待て、和葉達はどうなってんねん?ア
イツ、まだ東京に居るんか?? 

さっきから、工藤の携帯も姉ちゃんのも、コ
ナンのも応答が無いねん
新幹線の中で、散々、繋ごうとしたんやけど、
ひとっつも成功せんかったんや

「捜索願を出した後、おやっさんの執務室に
置き手紙を置いて、出て行ったみたいやねん、
静さん」

それにしても、オカンの行動が早過ぎると思
うた
ほぼ、リアルタイムで事態を把握してへんと
対応出来んスピードや

府警に到着し、親父と対面するなり、ぶん殴
られたオレ
そのまま道場で、猛者達の相手を散々させら
れた後、親父にこてんぱんに叩きのめされて 

今日は、遠山が不在やった事に感謝せえ、と
言い捨てられた

漸く解放されると思うたら、風呂入ったら執
務室の仮眠室で寝ろ、と言われてん

「オマエは今、静に勘当されてる身やから家
に帰る事は許さん💢」

不思議と、着替えやら何やらは、仮眠室にバ
ックごと置かれていた

どうやらオカンが本気でオレの事、家から叩
き出したんやと判る

オレの携帯には、紅葉から盛んに連絡が入っ
ていた

実は、事件後、何度か連絡が入って、オレは
それのいくつかに返事をしとったんや
別に大した用事や無かったし、色恋沙汰の話
でも無かった

あの時、裸足で長時間水の中で救助を待って
た和葉の事を聞いたらしく、和葉の様子を尋
ねられただけやってん

もし、聞かれたのが他の事やったら、オレは
返信などせんかったし、
紅葉の連絡に応答する暇があったら、気付け
ば最近あまり連絡をくれへん和葉に連絡した
んやけど

履歴を確認しても、肝心の和葉からは着信ひ
とつ、メッセージひとつ無い

おまけに、工藤や姉ちゃんらからもや

携帯をサイドテーブルに投げ、ベッドに転が
った

ぼんやりとした哀しそうな瞳で、オレの腕を
掴んでた紅葉の手を見てたあの瞳が浮かぶ

背中を向けて歩き出した、その小さな背中は、
一度も振りかえらず、工藤の手をしっかりと
握りしめてた

「オレやって、殆ど繋いだ事無いのに」

生命の危機が迫ってる時は別として
普段、和葉の手を握るなど、した事無いし、
まして、腕を組んでもろうた事も無い

どうせやったら、和葉が良かった

夢の中で、手が届かん距離で、和葉はポロポ
ロと涙を零し、月を見上げていた

何遍呼んでも、オレの声は届かんらしく、和
葉の頬を涙が溢れ落ちて行くのを見てる事し
か出来んかった

かずは
もう何遍、何万回と呼んだかわからんその名
前を、口にするだけで胸が締め付けられる

大岡、と言うのが言い難かったんや
和葉とおんなじ、葉っぱの名前の方が印象に
残ったし、名前も、さんと付けてしまうと違
和感あったしちゃんはオレのキャラちゃうし
ホンマに適当やってん

和葉にやましい事など何も無い
せやからオレは少しも気にもしてへんかった

でも、よう考えたら、カルタの姉ちゃんで十
分やったし、名前呼びに拘るような関係でも
無い

名前呼びに拘るんは、名前を呼ぶだけで、心
が揺れるんは、たたひとりだけ

いつも傍に居るのに、居らん存在に
その不在に、言いようもない不安を覚えた

いっその事、和葉が悪口で言われてる通りの、
めっちゃ我儘な娘やったらええのに、と思う

外見のせいなんか、口煩くオレを叱る様子を
見てるせいなんか、和葉を邪魔やと言う面々
は、どうもかなり誤解してんねん

和葉が我儘言うて、オレを振り回してるとか
真逆やって言うねん

振り回してんのは、オレの方や
アイツは、文句言うてるようで、言うてへん

その辺は、刑事で忙しい父親をよう見てるか
ら、反対に、我儘言うたらアカン、迷惑をか
けたらアカンって、普通以上に気を付けてん
ねん、無意識に

せやから、オカンとかは心配してんねん

熱が出てても、大丈夫や、と元気に振る舞う
てしまうし、ホンマはキツい事があっても、
そうは言わんし、泣いてるのを見られるのも
嫌がるくらいやから

いっそ和葉が我儘でいてくれたら、オレかて
何を無理させとんのか、すぐにわかんのにと
オレはいつもそう思う

和葉の文句は、オレのため
後でオレが困るくらいやったら、と叱ってく
れとるだけで、正確には、文句ではない

よう聞いてる奴らは、知ってんねん
その辺の事は
せやから、ツレ達も、オマエが悪いとオレん
事叱るし、和葉に謝れ、言うくらいやし
ホンマにオレ、どうかしとる
ずるずると、暗闇に引きずられるようにして
眠りに堕ちるけど、少しも休んでる気などせ
んかった

翌朝

言われるまま、朝稽古して、道場をひとりで
片付けて、執務室やら、仮眠室に秘密の会議
室を掃除して回ってると、昼間、突然振袖姿
の姉ちゃんがひとりで現れた

オカンに連れられて動き回ってるらしい

そして、自分の軽率な行動で、護るべきはずな
の和葉と、オッチャンを、とんでもない騒動、
陰謀の中に追いやってしもうた事を親父に報
されたんや

オカンが、オレの捜索願やら出したんは、オ
レの意志で大岡家に出向いているワケとちゃ
う、と言う意思表示

服部家は、認めてへん、って
両親が、奔走しとると言う事は、相当にまず
い状況やっちゅう事や 

和葉が、他の男と見合いやなんて、許せるハ
ズも無いし、おっちゃんが人質にされるよう
なんも困る

ホンマにすまん
こんな事になるやなんて、知らんかった

オレかて、久々の遊びの約束に、浮かれてた
だけやねん

それやのに
和葉を深く、傷つけたのは、もう消せへん事
実になってしもうたし

あれだけ和葉が楽しみにしとった映画も、オ
レは、他のヤツと見てもうた事になった

「本当に、何をしたかわかってる?」

叱るでもなく、怒るでもなく
姉ちゃんの言うた静かな一言が、一番オレに
刺さった

同じ映画館内には、和葉が居る
せやから、帰ったら一緒に映画の感想でも何
でも喋ったらええ、そう思うてた

和葉と話すために、映画の各シーンをちゃん
と見てたし、どこを話そうかも決めてた

終わった後、紅葉が何やら言うてたけど、オ
レはその話の半分も、ちゃんとは聴いてへん
かったけど

傍目にはきっとそうは映らんかったやろな
オレは、結果的に、和葉の望みを全部裏切っ
て、平然とへらへらしてアイツの前に現れた
それも、最悪のタイミングで

普段、後悔など絶対にしないタイプやけど、
今回だけは、時間を巻き戻せるなら巻き戻し
たいと、心底そう思うた

何遍巻き戻しても、昨日の朝、一緒に家を出
た時に、はしゃいでいた和葉しか思い出せへ
んかった

映画の後は、結局、何遍約束しても連れて行
ってやれへんかった、パンケーキの店とかに
も寄る予定やってん

漸くや!と朝ごはんもロクに食べず、オカン
に怒られていた和葉を思い出す

せやかて、楽しみなんやもん
食べたかったんやもんって言うてたな

約束がかなえられへんかった原因は、全部、
事件に飛び出したオレのせい

今回は、事件ですら無かったのに、オレのせ
いで、結局、また行けへんかった
おそらく、和葉はもう約束はしてくれへんや
ろな

海遊館もそうやった
USJもそう
何遍約束しても、かなわんから、もうええと
言われてん

どっちも、オレとは一緒には行かないって
これでまたひとつ、一緒には行けへん場所が
増えてもうたな

仮眠室での2日目の夜は、中々過ぎてはくれへ
んかった

携帯が震えた
工藤から、和葉の写真が何枚か届いた

オレンジ色の、柔らかな濃淡が効いた着物に
身を包んだ和葉が、姉ちゃんと喋っとる写真
結い上げた髪も艶っぽい

凛とした、色香が薫る様子に、いつの間にか
綻びかけた花を感じる
ゆっくりと、艶やかに咲き始めた花

逢いたかった
その傍に、いつものように、当たり前に居た
かった、と思う

どこかの公園やろか
和葉がひとり、空を見上げる写真では、その
横顔の儚さに、怖くなった

何を、考えてんのや?
いつの間に、そんなオンナみたいな顔、覚え
たん?

傍に、近くに居らん事が口惜しい
結局、その原因を作ったのはオレやけど
不意に鳴り出した携帯に、無意識で応答した

「和葉?」
「悪かったな、彼女じゃなくて」

あ、あぁ、工藤か

「少しは反省、したか?」
そう言うと、柔らかなため息が聞こえた

「和葉ちゃん、こんな状況でも、自分の気持
ちより、オマエの事、心配してるぜ?」

凛とした、強い子だよ、本当に
みんなに心配させないために、みんなの前で
は泣かないんだ
本当は、迎えにも現れないオメーの事、自ら
捜しに行きたくて、仕方無いのにさ

「悪い、オレ、今」
「蘭からこっそり聞いたから大丈夫だ
オレも、オメーの両親が決めた通り、今は指
示に従っていた方がいいと思うし」
和葉は?
「多分、ちゃんとは寝てないと思う
あ、和葉ちゃんの携帯は今、和葉ちゃんの元
には無いからな」
え?
「ちょっと気になってさ、今、灰原に調べて
貰ってんだよ」

オカンと再会してから、和葉は携帯の電源を
入れたらしいねんけど、電源が急に落ちたり
色々挙動がおかしくて、工藤が電源を落とし
たままにさせているらしいのだ

「一応、オレと蘭のも落としてたんだけど、
蘭をオマエのところへ行かせるために、事前
にチェックしてもらって大丈夫だったからさ」

やっぱり挙動がおかしかった和葉の携帯だけ、
電池を抜いて灰原の姉ちゃんに託して来たと
言う

「オメーさ、和葉ちゃんと再会する前に、色
々反省しろよ?」
惚れてる子の前に、別の子と腕組んで現れる
とかマジでありえねーから💢

まして、デートの約束してる日だぜ?
自分のデートが始まっても無いのに、だ
和葉ちゃん、映画の間も、空席のまんまのオ
メーの席、何度も見てたぜ?

ぐうの音も出ない
工藤は、本気で怒ってる

「いつもみてーに、笑って誤魔化したりは絶
対、無理だからな」
「あぁ、わかってる」
「いっつもそう言って、言い訳したり色々し
て逃げるだろ💢」

オメーのわかってるって言葉、信じてんのは
和葉ちゃんくらいだ

「和葉ちゃんはまだ、陰謀には気付いてない
ぜ?だから、今のうちに事態を収拾しないと」

大好きな父親を、困らせないために頑張って
しまいそうだからさ、と言う工藤

「せやな」

工藤は、オレの知らない時間の和葉の様子を
話してくれた
やっぱり、傍に居てやりたかった
いや、ちゃうな
オレが、傍に居たかった
工藤との電話は、久しぶりに長くなった

「とにかく、オメーはこれ以上話を拗らせね
ーように、親父さんの言う通りにしてろ、い
いな?」

動く前に、考えろ
オマエのその行動は、和葉ちゃんの笑顔を
護れるのか、泣かすのか、どっちか、な
判断に迷ったら、相談しろ
いいな?

「静華さんの心遣いで、和葉ちゃんは淋しく
ても、自分なりに精一杯闘って頑張ってる」

和葉ちゃんと静華さんって、母娘みたいだな
昔から
工藤は、出先でたくさんの古い写真を見せら
れたらしい

オレも、遠い記憶を辿る
お稽古事も、何も、時間が許す限りオカンは
和葉とオレを一緒に連れ歩いた

それはもう、工藤の言う通り、母娘のようで、
そう思うてる人も実は少なくない

和葉はオレと違うて素直やし、与えられた愛
情を疑うことなく丸ごと受け止めて、ちゃん
と感謝するんや

ありがとう、おおきにって言うて、向日葵み
たいな笑みを浮かべる

親父もオカンも、嬉しそうにその笑顔を見護
っていた
もちろんオレも

テレビ局の爆破の時も、あの脱出の時も、忙
しない中で、和葉はちゃんと言うてくれた
残念ながら、周辺がバタバタしとって、ゆっ
くりしとる場合やなかったけど、オレだけが
知る「一瞬」がちゃんとあって

嬉しかったんや
あぁ、良かった
和葉も無事やって、ちゃんと傍に居るって
オレにだけわかる顔、してくれたって

安心しきってしもうたんや
それが、オレの最大の過ち

すまん、和葉
ホンマに、オレが悪かった

愛してるも、好きやも、自分の胸の内ではも
うすっかり、言い飽きたくらいやねん
でも、まだそれを言う権利は無い

まずは、詫びて
総てはそこからや

放してしまった約束の山も、ちゃんとせな
総ては、それからや

電話もメールも出来ひん
声さえ聞かれへんの、こんなにしんどいんや
と思うて、へこたれそうになるけれど

絶対に負けられへん
必ず、和葉の隣に戻ってみせる

相変わらず、夢の中では泣いてる和葉に、泣
くな、と言うしか出来んオレやけど

泣かせた分だけ、ちゃんと返せるように、頑
張るから、もうちょっとだけ、待ってくれ、
と呟いた

「恋歌 下の句1」へ 
to be continued 

7th heaven side B

Ame&Pixivにて公開した二次創作のお話を纏めて完成版として倉庫代わりに置いています^ ^

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