から紅の恋歌 「揺れる季節に、巡る想いを3」

揺れる季節に、巡る想いを3

クリスマスイブ
予想通り、和葉はまだ変な声のまんまやった

熱が完全に下がったのは、イブの朝の事で
毎年、オカンが呼びつけるから、オレが誘わ
んでも和葉は家に居った

今年はそれどころか、かれこれ2週間強も既
に家に居るから、我が家では、和葉が家に居
る方が当たり前の事になりつつあった

「午後、ケーキ受け取りに行ってくる」

オカンはそう言うて、外出した
そう、オレにチャンスを与えるために、や
ホンマはケーキ屋が届けてくれる、言うんを
取りに行くと言うたんや

和葉はまだ、体力が不完全らしく、居間にあ
るソファーですうすう眠っていた
揃いのドナルドのグレーのパーカー着て、完
全に安心しきった顔で眠る和葉に、思わず頬
が緩むけど

和葉の手をそっと取って、「証拠」を見る

オカンが出かける前、和葉が爆睡しとると言
うんで、和葉の手に「証拠」をこっそり付け
たんや

(よう、似合うてるやん)
(そうか?)
小声でオカンと話したオレ

オカンはこっそり和葉の手の写真を撮ると、
満足げに出かけて行った
和葉は、すやすや眠ったままやった

出掛けるオカンを見送って、暫くして和葉が
起き出すのをオレは本を読みながら見守る事
にした

「ふ?え?え?な、何???」
起きあがって、仰天してる変な声の和葉に、
オレは堪え切れず笑ってしもうた

「え、あ、え?な、何なん??」
自分の左手に在る、見慣れないもんに目をや
り、和葉はオロオロしとった

「へーじ」
「ん?」

「これ、へーじなん??」
「オレや無かったら、誰がオマエにそんな
ん付けるっちゅうねん💢」
そんなオトコ、居ったんか?居るんやったら
勝負したるから、名前、言うてみ

「い、いや、居らんけど」
ぶんぶん首を振る和葉は、相変わらずのおっ
さんばりのガラガラ声で

「オマエに、言うたやろ?証拠が大事やっ
てな」

ふぇ、と泣きだしそうな和葉に、オレの方が
慌てた

い、いや、いやいや、和葉、和葉ちゃん
アンタさん、泣いたらアカンで?今、泣いた
ら、オマエの声、さらに偉い事になってまう

ふぇーんと、ホンマに泣きだしてしもうた和
葉に、オレまだ何も言うてへんけど、と思う
けど
とりあえず、小さい子を抱っこする要領で
抱え上げててあやした

「ええもんやったんやから、泣くなや」
「ふっ、ふっ、せ、せやかて、へーじ」

あーあ、声はめっちゃ酷いやん
もうどこのおっさんや、言うくらいのガラ
ガラ声や

「あんまり泣くと、また、熱出てしまうで?
どっこも行けへんやろが、これじゃ」

ティッシュを取ってやって、鼻をかむ和葉を
宥めて歩く
観念したんか、ぺたん、とくっついてめそめ
そしとる和葉を抱えて、縁側をゆっくりと歩
いて回る

「オレはオマエとじじばばになっても、ここ
で、こうして呑気にこうしてたいわ」
「ふっ、くっ、い、いきなり、じじばばって」
「まぁ、きっと、あっちゅうっ間にそうなる
やろ?」
「い、色々、すっ飛ばし過ぎや、へーじ」
「まぁ、ええやん、細かい事は」

むうっ、とした顔で睨む赤い顔の和葉は、ま
だ大きな瞳から涙がぽろぽろしとった

「で、和葉ちゃんの、お返事は?」
内緒💢と言う和葉に、それは無いやろ、と言
うオレ

「せやかて平次、私が言うた時、ちっとも
聞いてへんかったんやもん」
絶対言わん、と言う和葉に、ほな、OKやった
ら、オレにもコレ、つけろと言うた
和葉の首に下げた、もうひとつの「証拠」

「証拠や、証拠」
和葉がごそごそと首から鎖を外す

「…?これ、お揃いなん??」
しゃくりあげながらそう訊く和葉は、まだど
こかにあどけなさが残る

「カップルリング、揃いや無かったら一体、
何やねん💢」

ええの?と言う和葉に、オマエが決めろと言
うたオレ
ソファに並んで座って、和葉に指輪をつけて
もろうた

「おおきに、和葉」

抱き寄せた後、その額にキスを
涙を吸い上げて頬にキスをした
マスクをつついて、文句を言う

「早う風邪、治してくれんと何も出来ん」
「何もって、何する気なん?💢」
「色々あるやろが、色々、な💕」

まぁ、全部いっぺんに、とは思うてへんけど
少しずつ、オレとも仲良うしてや?

「・・・めっちゃ好きやで💕」

こっそり耳元に捻じ込んだ
そのまま形のええ耳を軽く噛んだ

「ふぇ?」
びっくりしとる和葉の頬にキスをして、マス
ク越しやけどキスもして、オレは和葉を抱え
て立ち上がった

そろそろオカンが戻る予定
玄関付近に和葉を抱えて連れて行くと、予想
通りのタイミングで、夜叉が登場した

「あらあら、和葉ちゃん、ええねぇ」
ぽやぽやしとる和葉の頬を撫でて、オカンが
笑った

「色々と頑張った甲斐、あったやろ?💕」
う、うん💕と頬を染める和葉は、悶絶しそう
な程、愛らしかった

まだ体調が万全でない和葉にご馳走は無理や
と言う事で、今年のケーキはちょっとしたサ
プライズ
オカンが、仲がええ知り合いに頼みこんで作
ってもろうたケーキ

「うわぁ!凄い!」

おっさん張りのガラガラ声の和葉も、おおは
しゃぎ
でっかいプリンやねん
リング型のでっかいプリンに、真ん中には真
っ白なババロア付き

「まだクリームはキツいんちゃうかって、気
を遣ってくれたみたいやねん」

和葉はもう、瞳キラキラや

「普段はお行儀が悪いからアカンけどな、今
日は特別や」

オカンは、大きなスプーンを3つ用意して手
渡すと、言ったのだ
さぁ、召し上がれ、と

ええの?ホンマに?と、大喜びの和葉の手と
オレの手に光るモノを見て、オカンがそっと
目を細めたのを見た

「お、美味いな、コレ」
「ホンマやね」
「美味しいな」

甘さ控えめで、ほろ苦いカラメルが大人向け
やった
甘ったるい感じがせん辺りが、オレでも食べ
られたんや

和葉は、のど越しが気持ちええ、と喜んだ
声、ガラガラやもんな

ババロアは、さらにめっちゃ手が込んでた
薄切りしたイチゴが、華のように埋め込まれ
ててん
こちらも、甘さ控えめで、フルーツの甘さや
酸っぱさが効いてええ感じやった

その後は、和葉の体調にあわせて、湯豆腐や
ら、おかゆやら、とてもクリスマスとは思え
ん料理やったけど、和葉の食欲も漸く戻って
オカン共々ほっとした

食後、お茶を飲みながら、またプリンに挑む
和葉を笑いながら、オカンは和葉と、オレの
手を取った

「へえ、2人とも、大きくなったんやなぁ」
もう、こんなんが似合う手になったんやねえ
と笑う
あっと言う間やな、と言うと、ぽんっと手を
叩いて立ち上がった

「平蔵さんと遠山さんから預かってたプレゼ
ントや」

どん、と置かれた大きな家電量販店の包みに、
和葉もオレもびっくりしたけど、すぐにオレ
は思い出した
せや、ダメ元でリクエストしとったアレや

「あ!」
MacBookProが2台と、iPadminiが2台
スペックも付属品も、全く一緒

今年は、何だかんだとドタバタしてて、誕生
日もクリスマスも一緒や言われてダメ元で言
うたんや
和葉はオレのお古のPC使ってんのやけど、さ
すがにガタが来てて、父親から譲り受けたタ
ブレットを愛用してたんや

でも、そのタブレットな、オレが壊してしも
うてん 
和葉から借りて事件に行ってる先でな、すっ
かり荷物にそれ入れてんの忘れて、犯人に鞄、
投げつけてしもうたんや

で、和葉にオレのタブレット修理して渡して
たんやけど、それもそろそろ挙動がおかしく
なっててなぁ

最近、和葉、めきめき腕上げてて、PC周りは
オレより詳しいねん
それもあって、出来れば同じスペックのを2
台欲しいんやけどって言うてたんや
高い、言うてめっちゃ渋られてたんやけど

「ケースは頑丈なの買え、それは自分らで用
意せえやって、平蔵さんが」
「ホンマにええの?こんな高いの、どっちか
だけでも良かったんに」 

和葉は、タブレットを、オレはPCをお願いし
とったんや 

「ちゃんと使うてくれたら、ええって、遠山
さんが言うてたで?」
それに、和葉ちゃん、まだ後数日は家から出
られへんし、設定したり色々するやろ?と笑
うオカン

結局、食事の後、居間で並んで座ってあれこ
れ設定するオレらと、その傍で編み物をする
オカンで過ごしたクリスマスは、穏やかに過
ぎて行く

相変わらず、ガラガラ声の和葉は、様子を見
るために立ち寄った親父達にまで、爆笑され
て、和葉はむうっとふくれっ面やったけど

オレらの指に在るモノを見て、おっちゃんを
差し置いて、オレの親父が非常、に残念そう
やった事を付けくわえとく

残念やったな、和葉の初恋は親父やけど、和
葉はオレがもろうたで?

晩酌をする親父達に付き合いながら編み物を
するオカンと、パソコンやら何やらセットア
ップに忙しいオレと和葉と、珍しくフルメン
バーが揃った珍しいクリスマスやった

ちなみに、親父達には、和葉サンタから特別
にええもんが配られた
オカンと事前に選びに行った、と言う新しい
ネクタイとハンカチや

オカンには、和葉から根付けが贈られた
こっちは和葉が倒れる前に出かけた先で用意
しとったんを、この間オレが遠山家に行って
取って来てん

オレは例年通り和葉から料金徴収をされただ
けで、何もしてへん

「可愛ええやろ?私のと色違いやねん」
和葉のと色違いで用意された根付けは、確か
にオカンにもよう似合うてた
帯のところから垂らすと、ええ感じに揺れた
それを、可愛ええな、と喜ぶオカン

和やかに過ぎる時間は、秋から完全に冬へと
その姿を変えていたけれど、室内はおっさん
声の和葉を中心に、穏やかな光に包まれてい
たんや

和葉が復活したんは、結局、年末ギリギリで
1ヶ月近く服部邸に居たため、オカンもオレ
も、すっかり和葉が居る事が標準になってし
もうてた

カップルになって初めての初詣で、揃いの指
輪して、着物姿で歩いてんのを複数の学校関
係者に見つかっていたらしく

(おまけに、数人が、帰りがけの公園でキス
しとったのもばっちり、見てたらしい)

年始明けのオレらは、大騒動に巻き込まれた
上に、教職員にまで、付き合うてんのがバレ
ると言う恥ずかしい事態になった

でも、おかげで堂々と手を繋いで歩けるし、
街中を連れ歩いてもええし、オレとしてはこ
んなんやったら、もっと早う言えば良かった
と思う程、穏やかな日々

まぁ、バレンタインに、姉ちゃん→工藤→
オレ→和葉とインフルエンザがキレイに移っ
たおかげで、和葉からチョコが貰えへんとか
そう言うアクシデントはあったけど

オレに彼女が出来た事が、マスコミにもバレ
て、変なのに追い回されたりもしたけど

オレと和葉は何とか協力して、面倒な局面を
脱したんや

工藤達には、年始明けの年賀状で報告した
和葉と着物姿で一緒に映った写真を送り付け
てやったんや
ピースしとる手に、「証拠」も映ってるし

もちろん、姉ちゃんとコナンから、凄い勢い
で電話が来た

「一体、いつ、どーなったんだよ!💢」
「おめでとう!和葉ちゃん、服部くん💕」

そんな2人やって、姉ちゃんにしっかりと抱
っこされたコナンと2人が映る写真付き年賀
状やってんで?

今年は写真付きで、と約束しとったからなぁ

姉ちゃんの首には工藤が必ず帰ると言う約束
で贈ったクリスマスプレゼントが揺れていた

そして、あの花が咲き乱れる季節が廻り来た
恋人同士として(ホンマは、婚約者同士とし
てやけど)歩く桜並木

バイクやないから、珍しく柔らかな色合いの
ワンピース姿の和葉と並んで歩いた

風に揺れる、淡い春を告げる花
風に流れる花びらが、圧巻やった

オレと和葉は、散々家族交えて話し合い、進
路もちゃんと決めた

それを受けて、つい先日、結納を交わした和
葉は正式に、オレの婚約者になった

オレが18歳になるのを待って、書類が先行し
て提出される予定
受験関連の手続き上面倒やと言うオカンに押
し切られてん

そしてオレは、交際相手が居る事を、公式に
認めた

加熱する報道に、先手を打ったんや

ある取材を受けた時、双方の親公認やっちゅ
う事も添えて、コメントを出した

余計な縁談、これ以上持ち込まれんようにす
る意味もあったんやけど
何よりも、未だにどこか疑心暗鬼の和葉に、
疑う余地も無い「証拠」を残すためでもあっ
たんやけどな

学校以外では、指輪は外さんようになったし
和葉が忘れてる時は、オレが御守りから出し
てつけてやるようにもなった

未だに時々、指輪の在る指をじっと見てる和
葉は、正直、めっちゃ可愛ええ💕
ニコニコしたり、むうっとしたり
へらへらしたり、真剣な顔やったり

「かーずーはー💢オマエ、何をひとりで百面
相しとん」

え、あ、あはは、と笑う顔は、しまった、と
言う表情

「ホンマ、アホでこまるわー、和葉ちゃん」
「何やて!💢」
元気に追いかけまわす和葉は、
いつもの和葉や

和葉はあの後、ゾンビ部員のまま言うのも悪
いし、未来子のためにも、卒業までは部を残
してあげたいから、と言うて、毎回は出られ
へんけど、かるた部の練習に顔を出すように
なった

4月の新入生勧誘についても、協力すると言
うてて、オレと和葉で対戦する予定やねん
デモンストレーションで、な

先月、ある競技会で紅葉は参加してへんかっ
たけど、和葉はちゃんとトーナメントを勝ち
進んで、ちゃんと優勝した
オカンが殊のほか喜んだのは言うまでも無い

学校側も、かるたブームを受けて、学校行事
にも取り入れようと、廃部どころか存続へ向
けて協力してくれるようになった

合気道の昇段試験にも合格した和葉は、今年
度の優秀学生賞を受賞したんや

文武両道、学業も部活も頑張ったってな
うちの学校の伝統やねん
4月から翌年3月までの1年間に、何か功績を
残した生徒を男女1名ずつ選抜ってな

オレは、昨年もろうたんやけど、今年は親友
の晃が貰ったんや
さすがに今年は出席ギリギリやったしな

来年は、和葉と揃ってもらえたらええなと密
かに狙うてるオレ
その頃にはもうすでに、和葉は遠山姓や無い
せやから揃って欲しいねん
服部平次、服部和葉ってな

学校側には入籍後に報告して、在学中は、遠
山姓を名乗らせる予定

(ま、当然、公的機関の書類はあと少しで総
て服部姓になってまうけどな)

数ヶ月後には、遠山和葉から服部和葉に代わ
る張本人は、今日も元気にオレの事をどやし
たり、励ましたりと、忙しい

先日、ある雑誌の取材で、紅葉と再会した
オレの指輪に気付いて、やっぱりそう来まし
たか、と笑った紅葉

「おめでとうございます、お幸せに」

そう言うた紅葉と、握手して別れた
すっかり元気そうな笑顔で去った姿に、恐ら
く彼女にもええ人が早々に現れる予感

呼びづらいけど、これからは、大岡と呼ばな、
もし彼女にええ人が現れた時に、彼女自身が
困るやろな、と思うたオレ

どうか幸せにと、立ち去る車を見送った

そして
かるた部のデモンストレーションは大いに盛
り上がり、剣道部、合気道部も大盛況やった

入部希望も多かったらしく、オレ達の高校最
後の1年は、華々しくスタートした

1ヶ月後、和葉はひっそりと服部和葉になっ
て、正式に、オレの嫁さんになった

学校側には色々な約束をさせられたけど、ま
ぁ、在学中は婚姻の事実を隠す事で合意した

新緑の爽やかな風が流れる5月の佳き日

「平次、和葉ちゃんの支度、出来たで」

和葉への誕生日プレゼントのサプライズで企
画したんは、家族だけの挙式

まぁ、正式なお披露目は、高校卒業後にやら
なアカンから、今回は、ホンマに内輪で進め
られてん

毛利探偵と、工藤(コナン)と姉ちゃんには
雑誌の撮影やと嘘ついて呼んでもろうた

オカンが数ヶ月かけて縫いあげたドレスを纏
い、窓辺に立っていた和葉に、オレは、ぼー
っとしてしもうた

クラシカルなレースのドレス、エンパイア型
と呼ばれる肩が出るドレスで、シンプルで大
人っぽいけど、よう似合うてたんや

巻髪に生花が飾られてんのも、薄化粧も、窓
辺から差し込む陽射しを反射して、キラキラ
しとった

ネックレス代わりの首に巻かれたリボンも、
オカンが渾身の作やと言うたブーケも完璧や

「何か、は、恥ずかしいな」
へーじ、スーツかっこええね💕と笑う和葉に
キスをした

「こら!💢平次!まだや、まだ!」

口紅が落ちてまうやろ、アホ!とオカンに怒
られたし、真っ赤になった和葉にも、もうっ
💢て怒られたけど

「めっちゃキレイやで💕」

そう言うたら、泣きそうな和葉を、オカンが
化粧が崩れるから泣くな!と一喝して
その様子に、係りの人らが大爆笑しとった

こんな日でも、服部家はいつもの服部家や
それでええ、それが、ええ

その後も、めっちゃくちゃやってん
まず、毛利のおっちゃんと妃弁護士が喧嘩を
始めたやろ?

姉ちゃんも、最初は宥めてたんやけど、途中
から本気で怒りだしてしもうて、工藤がめっ
ちゃ困っててん

結局、オレが仲裁したんや

それが済んで、漸くみんなが教会に入って座
った思うたら、オレの後ろで、騒ぎが起きた

「やっぱり、バージンロード、一緒に歩くの
は嫌や!」
「何を言うてん、お父ちゃん!💢そんなん言
うんやったら、私、おっちゃんと歩いてまう
よ?」

「「それはヤメロ!!💢」」

オレとおっちゃんの声が重なる

オレらは知ってるからなぁ
あのキツネ目親父が、和葉の初恋相手やって

案の定、親父は嬉しそうな顔で、ワシは一向
に構わないで?と言うし、オカンが何やった
ら、私と歩く?何て言い出して

結局、

「おっちゃん、勝負はついたんや!約束は護
ってもらうで?」

おっちゃんがどうしても嫌や言うんやったら、
オレが和葉と手を繋いで行くけど、それでえ
えんか?💢

と言うオレの言葉に、おっちゃんが応じて

何だかんだ言いつつも、嬉しそうな顔で、和
葉とバージンロードを歩いたおっちゃんや

式場に入場した花嫁の美しさに、みんなから
うわぁ、と歓声が上がった
カメラマンやら式場スタッフの人らまでや

そうやろ?
オレの和葉、めっちゃキレイやろ?と、思わ
ず口に出る

そんな時、次の騒動が起きた

撮影やって言うてんのに、姉ちゃんが感極ま
ったんか、わんわん泣いたんや

子供みたいに泣きだしてもうて、和葉も貰い
泣きどころか、途中から目でコナンに、アン
タが慰めなさい💕と合図するし

コナンはオロオロしとって、姉ちゃんに掴ま
るなり、ぎゅうぎゅう抱きしめられて、死に
そうになってたんや

どうにかこうにか、誓いの言葉を述べて、正
式ルールにのっとって、頬にキスしたオレに

「平次!アンタはオトコやろ!やるんやった
らちゃんとしなさいっ!💢」

と言うオカンの一喝が、厳粛ムードをぶち壊
したんや

「せやな、ほな、ちゃんとさせてもらいまし
ょか💕」
「ふぇ?」
と言う和葉に、めっちゃ濃厚なキスをした

よし💕と言うオカンと、何すんのん!!💢と
真っ赤になって叫ぶ花嫁の声が交差して
オレは夫やのに、花嫁に叩かれると言う、ま
さかのアクシデントが起きた

その後も、色々ありまして
それはもう笑いと涙にまみれた式になった

式場の人らも、協力してくれた撮影班の人ら
も、ずーっと、泣き笑いやってん
こんなん、初めてやって言うてな

オレと和葉もそうやねん
せやかて、神父様が、ぷぷぷって笑うてんの
やからな、目の前で
笑うな、言う方が無理やろ?

「・・・本番が思いやられる」

親父はそう言うたけど、オレららしい式で
最後はみんなで笑って写真に収まった

ドレスを脱ぐ前の和葉と、控室に立てこもっ
て、キスをして一緒に写真をこっそり撮った

「末永く、よろしゅうな、和葉」
「よろしゅうお願いいたします、平次」

にっこり笑った和葉の腰に腕を回して、もう
一度、しっかりと唇を重ねた

もちろん、今度は殴られへんかったで?

幼なじみやろうが、恋人同士やろうが夫婦や
ろうが、オレと和葉はずーっとこんな感じや
きっと

泣いたり笑ったり、怒ったり拗ねたりしなが
ら、のんびり歩いて行こうや、和葉

色々な事があったとしても、オマエの事は絶
対に護る
どんな事があったとしても、や

せやから、オマエは最後まで絶対に諦めんと、
待っとけ

オレの心臓が持たんから、無謀な行動に出る
のだけは、止めてくれ
それだけが、オレの願いや

後は、のんきに笑ってろや

やりたい仕事がある、言うてたからそれに向
かって真っ直ぐ走ってったらええし

オレの後やなくて、隣を走るんは、オマエの
仕事やし

何やったら、オレの前、走っててもええで?

そしていつか、互いのこの生を終える日に、
ええ人生やった、楽しかったな、と言えるよ
うに、全力で走ろうな、和葉

まぁ、あの世でも、来世でも、もう離してや
る気は一切無いけど

まずは、この生命を使い切るその日まで、よ
ろしゅうな、オクサン

カップルリングが結婚指輪に変わった日
オレと和葉は、初めての階段をもうひとつ上
がった

揺れる季節に惑わされる事なく
移り変わる四季を巡っても、変わる事の無い
愛情を重ねて

オレと和葉の人生は、まだ始まったばっかり

寄り添い、重なりあった道を、しっかりと手
を取りあって、嵐の夜も、晴れの日も、一緒
に歩いて行く

総ては、ここから、総ては、これからや
せやろ、和葉?

季節が巡り、想いが廻っても、オレらはオレ
らに還って行くんや

この世でも、あの世でも、来世でも
オレらがオレらである限り、オレらが居るべき
場所は「隣」や
せやろ、和葉?

腕の中で眠る妻にキスをして、しっかりと抱
え直してオレはまた、眼を伏せた

Fin

7th heaven side B

Ame&Pixivにて公開した二次創作のお話を纏めて完成版として倉庫代わりに置いています^ ^

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