For you 完全版_4

第3章 思い出作りの春

「行って来ます!」「行って来る!」
「行ってらっしゃい!」

オカンに見送られて、和葉と2人学校へ向かう

高3の春、オレと和葉は同じクラスになった
そして、担任は剣道部顧問、副担任は合気道部顧問と最強の布陣が組まれた
剣道部副主将の晃と、その彼女で和葉の親友の翠も同じクラスやった

「なぁ、服部、頼む!」

剣道部のミーティング終わり、部員から懇願
されたオレは、困惑しとった

最後の1年が始まり、何かにつけて、最後のが付き纏うようになった

みんな、最後やから、と言うては、思い出作りに夢中
受験生になりたてと言うのもあって、更に拍
車がかかっとるようやった

オレも、和葉も、付き合うてると公言しとるのに、ダメ元でええから、と、呼び出しが続
いたし誘いも激しく、ウンザリしかけていた

そんな中、部員が騒いだんや
和葉の弁当が食べたい、と

「いっつも、服部、分けてくれへんやん
美味そうだなーって」

いつも差し入れてくれるお菓子も、レモンも美味いやんか、でも、弁当、食べてみたいねん、と言う

和葉の事やから、ええよ、言うやろうけど、
食べ盛りの部員全員分となると、府警の差し入れに慣れとる和葉とはいえ、その量は未知数や

それに、服部邸に引っ越しして、まだ1ヶ月にも満たない
いくら慣れとる家や、言うても、和葉なりに
気を遣うてると思う
和葉への負担は、増やしとう無いんやけど

でも、部員達には、たくさん助けてもろうたし、和葉ん事も護ってもろうたり色々と世話
になった

「うん、ええよ?メニューは、何でもええんやろか?」
「そこは、文句言うなやって言うてある」
「おばちゃん、何がええやろか」
「せやなぁ」

オカンと和葉に、助っ人を呼んでやる事にしたオレ

晃と翠や
和葉が家庭の事情でうちで暮らしてる事を唯一知っとるんや
実際、オレが和葉の登下校に付き合えん日はこの2人が付き添うてるし

「それは、心強いなぁ、和葉ちゃん」
「せやね、翠やったら、安心や」

晃は、何も無いとは思うけど、心配やからと言うてついて来るんや

「それでこそ、オトコや!
さすが、晃くんやなぁ、どっかのボンも見習わんとアカンで?」

金曜日の夜、晃と翠もやって来て、みんなで
仕込みが始まった
野菜の皮むきから、出汁取りに、肉の漬け込
みにと、和葉達はフル稼働
オレと晃も駆り出され、準備が終わった後は
客間に4人、倒れ込んで眠った

翌朝、オレと晃は試合があるから寝てろと言われ、和葉達はちゃっちゃと仕上げて詰め込
み作業に大奮闘

練習試合は、強豪校相手やったのに、弁当パ
ワーか、圧勝やった

控え室に並べられた弁当に、部員はみんな狂喜乱舞

だし巻き、唐揚げ、お漬物、里芋とタコの煮付けに、筑前煮などなど、たくさん並んだお重に、どんどんと手が伸びる

おむすびも、梅、シャケ、昆布に加えて、お赤飯やら、桜エビと枝豆と筍のおこわまで揃えてあって、こちらもどんどん消費される

和葉と翠は、部員や顧問の間を縫って、お茶を配り歩いていて、全く食べられへん

おやつに、と配布したんは、どら焼きや
昨日、オレと晃がオカンの指南を受け焼いて詰めたもん
こっちもあっと言う間に消えた

ごちそうさん、の大合唱を聞いて、オレは後片付けはみんなに頼み、晃と一緒に一口も食べてへん和葉と翠を連れ、いつものおこのみの店へ行った

「和葉と翠は食え、焼くのはオレらがやる」

ええのん?と言う2人に、ええから食え、と食べさせて、オレらも口にした

みんな、やっぱり美味かった、と大満足で、
喜んで貰えたし、試合も上出来やった

目の前で、じゃれあいながらおこのみを食べる和葉達を見て、こうやって制服着て、友達と遊べるのもあと少しやん、と思うと、普通
の高校生としての時間が、どれ程貴重な時間
かと思う

へーじ、晃くん、ごちそうさんでした!
めっちゃ美味しかった!

嬉しそうに笑う和葉と手を繋ぎ、晃と翠と別れて歩き始めた

「楽しかったなぁ」
「久しぶりやもんね、平次とこうして寄り道するんも」

手を繋いで帰る家が一緒やって言うのも、まだ慣れてへんオレら

それでも、毎日勉強頑張って、剣道や合気道の稽古も積んで、オレらなりに来るべき時に向けた準備は怠ってへん

二度と戻らない今日を、大事に過ごしながら
積み重ねて行く大切さを

オレも、和葉も、噛み締め始めていた春の日
やった

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to be continued 

7th heaven side B

Ame&Pixivにて公開した二次創作のお話を纏めて完成版として倉庫代わりに置いています^ ^

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